令和6年度 学際共創プロジェクト【バイオサイエンス部門・生命システム領域】
IL-6Rシグナル伝達のマルチプレックスイメージング
研究代表者: 藤田 恵介(ヒューマン・メタバース疾患研究拠点)
研究分担者: 上田 昌宏(生命機能研究科)
研究の背景
遺伝的に同一であり、同じ環境下で培養された細胞集団内でも、個々の細胞には差異が生じ、細胞の不均一性が現れます。近年の1細胞計測技術の発展により、この不均一性を定量的に評価できるようになり、その生物学的意義やメカニズム、さらには制御手法に関する研究が進められています。この技術が確立されれば、薬剤耐性を持つがん細胞サブクローンの制御や、再生医療における均質な細胞分化誘導が可能となります。また、オルガノイドや人工組織の設計・構築に必要な、細胞運命の制御にも応用が期待されます。
研究の目的
本研究で着目するInterleukin-6(IL-6)は、炎症、免疫応答、造血に多面的に機能し、がん細胞では腫瘍の進行を助けます。さらに、神経幹細胞の自己複製や分化を調節することで、発生や分化の過程でも重要な役割を果たします。IL-6は細胞膜上のIL-6受容体(IL-6R)/gp130複合体と結合し、主に2つのシグナル伝達経路を活性化します。ひとつはJAK/STAT経路で、gp130に結合したJAKがgp130の細胞質領域にあるチロシン残基をリン酸化し、そのリン酸化部位にSTAT3がリクルートされて活性化します。もうひとつはJAK/SHP2/MAPK経路で、同様にリン酸化されたgp130にSHP2が結合し、その下流でERKが活性化される経路です。これまでの研究で、EGFR受容体シグナル伝達において応答の確率性が細胞状態によって予測可能であることが示されています。本研究では、この予測可能性が他のシグナル伝達経路にも共通するかを検証します。
本年度の成果について、詳しくは活動報告書(PDF)をご覧ください。