CALLシステム
授業担当教員の声

私のCALL授業
――Web-OCMによるTOEFLタイプテスト――


仙葉 豊(言語文化研究科応用言語技術論講座 教授)

 この2年ほど、CALL教室を活用したテスティング形式の授業を実験的におこなっている。自分の受け持っているクラスのなかで、通例のクラスルーム対面型の授業に加えて、CALL教室での授業の可能性を追求してみたいと思ったからである。5クラス中で2-3クラスをCALL教室で行っている。TAを1人ずつ各クラスにつけていただけたので、比較的スムースに考えていたことが実施できていると喜んでいるところである。
 授業のタイプはリーディングとリスニングであり、通例は40人から60人ほどの担当クラスサイズであるが、ちょっと大きめの、65人収容と100人収容のCALL教室を使わせていただいている。最近の学生さんはコンピュータを抱いて寝ている、とか言われているだけあって、しかつめらしい教師の顔を見るよりいいと思っているのだろうか、受講生たちも結構喜んで端末画面とにらめっこをしているようだ。この分でいけば、90人クラスや60人クラスなど、教室サイズ上で収容可能な数の学生たちを、1人の教師とTAとで組んで対応することが可能になりそうだ。もとより、通例の授業のようにていねいな教え方はできそうにもないが、大きなクラスサイズになっても、ある程度の授業効果はあげられるのではないか、と多少の自信も持ち始めている。
 もともとは、私自身は、コンピュータなど大嫌いで、せいぜいワープロ機能とちょっとしたメールのやりとりぐらいしかできないのだが、サイバーメディア・センターの細谷行輝教授に勧められて、いやいやながら、しかたがないからやってみようかぐらいの気持ちで始めたのであった。CALLでの授業などしようとは思ってもいなかったし、現在も機械がどのようなかたちで動いているのか、そのプログラムやテスト問題の入力などはさっぱり分からないままなのである。授業がなんとかおこなえているのは、ひとえに、サイバーメディア・センターのスタッフ、大前さんと山本さん、および、うちのクラスのTAの皆さんのご支援のおかげなのであるから、ちょっと恥ずかしいかぎりではある。
 100人近くの大きなクラスサイズでの外国語の授業になると、もう方法としては、テスティングしか思い浮かばない。いくらTAがついていてくれても、受講生のなかには、あちこちで話を始めたり、それぞれに自分の内職に手をそめるやからも出てくるだろうから、クラス全体の雰囲気が悪くなり、授業をおこなっていく上で大きな障害になっていくことは、容易に想像がつくだろう。大クラスでは、通常の授業では可能な教師の教室コントロールがきかなくなるのである。そこで、テスティング主体の授業の登場となる。90分授業を3分割して、30分を一つの単位とし、TOEFLタイプのリーディングのテストを10分で行い、残り15分を教師による解説と解答提示の時間に割りふってみた。つまり、500―1000語程度の英文に設問が10つくタイプの、いわゆるTOEFLテスト形式のものを画面に映し出して、それを、10分ほどで学生さんにやってもらい。それから、解説と解答を教師がおこなうという形式にしてみたのである。90分の授業ではこれが3回ほど続くことになる。
リーディングテストの画面例

 このようなテスティングによる授業が可能になるためには、サイバーメディアの細谷教授の開発になる自動採点システムが大いに役に立っている。画面には向かって左側に問題文が現れ、右側には10の設問が現れる。それぞれ4択の設問の解答をひとつひとつ受講生がクリックすると、最終的には、「テストやめ」の声と同時に、瞬時に教師用コンソールの画面に、100点満点で各受講生の獲得点とそのクラスの偏差値と平均点が表示される仕組みになっている。受講生の端末にも自分の成績が累積表示されているのはいうまでもなかろう。各自の点数は学期中におこなったすべてのテストの集計となって記録されているので、この点数で成績をつければいいことになる。当然ながら、教師が出席をとる手間も省くことができる。このことを、学期の授業始めにクラスポリシーとして受講生に言っておけば、眠ったり、私語をしたり、内職をしたりしてテストを受けないと、それが最終的な成績にひびいてくるのであるから、結果は明白だろう。私の短いCALL授業体験では、まず寝ている受講生はいなかった。
 たしかに、毎回実力テスト形式での授業は、予習のできない受講生にとっては、いささかきついかもしれない。そこで解説時に、文字化したテスト問題を受講生に渡して、それを見ながら解説をおこなっている。このことによって、渡した紙タイプの問題が、期末試験の試験問題として一部再使用されることを宣言しておけば、受講生も復習が可能になり、毎回の実力テストという重荷から多少は解放されるかもしれない。限定された試験範囲内でのテストという形も取り入れることによって、受講生の一定の努力値も測りうるだろう。そのためにも、紙による問題の再提示は必要になるだろう。それに、受講生のあいだから、一生懸命画面を見ながらスクロールをすると目が非常に疲れるという苦情がでた。目の疲れを緩和するためにも、教師の解説の間は紙メディアを利用した方がいいと思われる。
 いくつか残っている問題のなかで最大のものは、問題の入力であろう。TOEFLタイプのテストという具合に、テストの型を決めておいて、このようなタイプのテストを授業に取り入れることに賛成の先生方が、お互いに協力し合って問題を入力し、それを交換しあって利用すれば、テスト問題のストックも増えてこよう。問題の作成と入力を教師間の連携で次第に増やしていけばいい。そうなれば学生の自習にも役立つだろう。なんとかその方向性が見えるところまでやってきているように感じている。
 また、今学期からリスニングのテストも、上述のリーディングのテストと同様可能になった。これもまた、細谷教授のプログラムによるものだが、こちらのほうは、これからすこしずつ改良を加えながら、新しい使い方を考えていきたいと思っている。幸い、CALL研究会がサイバーメディアと英語部会の間で立ち上げられようとしている。今後、このようなテスティングによる授業のありかたをより緻密な形で追求しつつ、あらたなe-ラーニングの形態を構築していきたい。