特 集

鳥取環境大学のリテラシー教育への取り組み


永井孝幸(鳥取環境大学)
齊藤明紀(鳥取環境大学)

1.はじめに

 情報リテラシーの科目の運用に関しては、各大学ともにいろいろと工夫をしまた苦労しているものと拝察する。鳥取環境大学では全学生がノートPCを持つという環境でリテラシー教育を行っている。大阪大学の情報活用基礎とは置かれた立場が異なる面もあるが、受講生の多様性に対処する必要がある点など、似た点もある。以降、鳥取環境大学における現状と展望について述べる。他山の石としていただきたい。
 まずリテラシー科目のカリキュラム(課題内容)について、つづいて科目運用について論じる。

2.環境大学のカリキュラム

 情報リテラシーに対応する科目は、鳥取環境大学では「情報処理」である。情報処理は1 年生配当の全学必修科目で、4 つのクォーター科目、情報処理1,2,3, 4に分かれている。情報処理教育を専門に行う科目はこれだけである。情報処理では2001 年の開学時に決めたカリキュラムを毎年微修正しながら、現在に至っている。現在、2006 年度入学生に対応するためのカリキュラム構成の大幅な改訂を検討中である。本学の情報処理の特徴は以下の通りである。

2.1 現状のカリキュラム

科目「情報処理」には3 つの目標がある。
  1. パソコンの操作技術を身につけること。
  2. 情報技術に関する理解を深めること。
  3. 手引き書を読むことで自力でコンピュータ関連の技能を身につけることができるようになること。
 本学では、WEB 掲示板や教材データの提供、レポート執筆と提出、プレゼンテーションなど、各個人がPC を保有して持ち歩くことを前提に、事務体制や科目運用がなされている[1]。そのため大学生活で必要な基礎的な操作は確実に身につけさせる必要がある。すなわち、次のような技能の習得が必要である。 情報処理1~4でこれらが身につけられないと、単に当該科目の再履修が必要と言うだけでなく、他の科目の単位取得もおぼつかなくなる。そのため、操作教育の比率が大きくなってしまっている。
 大学で必要となるPC 操作技能を全て週1 コマ× 28 回で教えることは出来ない。専門分野によっては、それぞれ異なった高度な情報処理技能が必要となる。また卒業論文の執筆には、「論文を書いてみよう」で教えた内容だけでは不足である。そこで、自分に必要な操作技能をヘルプや参考書を読んで独学で身につけることが出来るようになることが重要である。
 2005 年度のカリキュラムを表1 に示す。前期末に他の科目でのレポート提出や発表会で必要となるのて、ワープロとプレゼンテーションの基礎は前期に配当している。また、あとに行くほど高度な課題、一般性が少ない課題としている。
 課題の難易度の設定は、PC 操作経験がほとんど無く飲み込みの悪い学生でも脱落せずに課題が行えることを目標に決めている。

表1: 2005 年度のカリキュラム

2.2 現状の問題

 情報処理は必修科目であるし、PC 操作は本学での勉学に必須の技能であるから、全学生が合格レベルに達することが出来るように難易度を設定する必要がある。このことが困難を生んでいる。
 難易度を検討する際に、学生を3 群にわけて考える。

slow learner  予備知識・技能が少なくまた飲み込みの悪い学生。情報処理科目のカリキュラムの内容や進度は、このような学生が週に1 コマ(90 分)の演習と2~ 3時間の自宅学習で合格レベルに達することを目安に設定している。

普通レベルの学生 入学時点でのPC 操作技能がそれほど高くはないが、テキストに従って自力で所定の技能を身につけることが出来る。平均レベルの学生は、90 分の演習時間で課題をほぼ終えることができ、自宅での作業は多い週でも1 時間程度と見積もっている。

上級者 入学時点でPC 操作に習熟済みの学生や、入学時にはスキルが低くとも入学後の学習進度が速い学生である。
これらの学生は、演習時間を余らせて課題を終えてしまう。この学生の満足度が低くなってしまうことが問題である。

 入学時のパソコン操作経験率は100%に近づきつつあり、10 数年前のようにマウスの持ち方から教える必要はない。しかしながら、たとえば「シフトキー」が何かを知らない、など、ほとんど予備知識のない学生も存在する。
 Windows でのOffice スートの操作技能に関しては、入学時のレベルは毎年上がっている。しかしながら、技能の底上げという形ではなく分布が上に伸びるという現象がおきている。上記の分類で行くと、slow learner の学生は減っていないのである。そのため、科目開始時点での課題の難易度を上げたり進度を速めたりすることができない。一方、普通レベルの学生が減って上級者が増えているので、学生の「易しすぎてやりがいがない」という不満が高まっている。

2.3 2006 年問題へ向けて

 2006 年度より、高校で教科情報を修めた学生が入学してくる。我々大学側としては、これを機に「情報処理」から初歩的な操作教育を取り除き、高度な内容や、倫理問題や著作権といった操作教育以外の内容を増やしたいと考えている。しかし、それは望み薄である。高校によって、情報A,B,C のどれを学ぶかが異なる。このため、全入学生に対して共通的に期待できる教科情報の履修内容は、非常に小さいと考えられる。また、河合塾の調査[2] によると、情報A を高校1 年で学ぶ場合がもっとも多いという。このことから、科目情報で学んだ知識や操作技能を大学に入学した時点ではかなり忘れてしまっているのではないかとも思われる。さらに、高校での科目情報の教育内容が安定するには数年を要すると考えられる。そのため、大学では新入生の知識・技能状態について特定の過程を置くことが難しいし、2006 年の学生の状況と2007 年ではまた異なると考えられる。
 結局、情報教育における2006 年問題とは、「高校で基礎的な内容が必修で習得済みになるので大学の情報教育が高度化を迫られる」というものではなく、「新入生の予備知識のレベルの分布がより広くなり、一律のカリキュラムで対応できなくなる」というものであろう、というのが筆者らの現在の認識である。高校によって同じ情報A なら情報A でも多様な教育が行われているため、全学生が共通に知っていることは少ないが、何を教えても「それはすでに高校でやりました」という学生は何人か居る、という困難な状況が予想される。
 すでに知っていることを必修の演習でやらされるという学生の不満に対処するには、初歩レベルを扱う情報処理の1や2を必修から選択に変えるという対策が考えられる。しかし、これには二つの問題点がある。
 1 つの大きな問題は、学生の自分自身のスキルに関する認識は往々にして間違っていることである。現状でも、授業中に「課題は全部出来たから先に帰りたい」と言い出す学生のレポートを見ると、間違いが多く合格点に達していないことが多々みられる。そのため選択授業にすると、本来は受講が必要な学生が、選択しないことが想定されるのである。
 また、既存知識に関係なく受講が必要な、本学の情報環境特有の説明も情報処理1 では行う(パスワード、プリンタなど)ので、単純に選択制には出来ない。
 あとの節で述べるように、学生のばらつきはある程度は科目の運用でカバーできるが、高校で操作教育を受けなかった学生と十分うけた学生のように極端に差が開いた場合には対応が困難になることが予想される。そこで、現在の情報処理1~4 の内容を精査し、高校の情報A の中の操作教育でカバーされる部分を分離することが考えられる。これを仮に「情報処理0」という講義名だとしよう。ここで、教員・TA 割り当て人数を決めるためには情報処理0 受講者数を予測せねばならない。
 我々は、多くの学生は基礎的なPC 操作は習得済みかあるいはテキストを見て自習で習得可能であろうと考えている。これは現在の情報処理1 と2 の成績分布を分析した結論である。図1 にみるように、ほとんどの学生は80 点以上を取得している。また10 点~70 点の学生が均一に分布している(正規分布ではない)点も気になるところである。補習クラスを作るとしたら、中教室1 つで足りると思われる。
図1: 成績分布

 講義スケジュールに関しても要検討である。「情報処理0」と「情報処理1」を第1 クォーターに並行して開講するか、情報処理1 を第2 クォーターに開講するかである。本学では、情報処理のカリキュラム進度を速めて欲しいという要求が教員から出ている。というのも現状のカリキュラムでは、ワープロでのレポート執筆やPC でのプレゼンテーションが出来るようになるのが7 月のため、前期の1 年配当科目ではPC を用いた課題やレポートが課しにくいのである。情報処理0 を1との並行開講とすることで、授業を受ける上での最低限必要な操作技量の習得時期を6 月始め程度にまで早めることが出来る。slow learner は週に2 回、情報処理の演習を行うことになるが、この程度であれば学習進度としては許容範囲であると考えられる。
 以上はslow learner の対処策である。もう一つの問題、上級者やあるいは学習進度の速い学生の、「課題がもの足りない」という不満への対処は、発展課題を課すなど、科目運営形態でカバーすることになろう。

3.科目運営の立場から見た問題

 主に情報処理科目の運用の面から2006 年問題について考えてみたい。筆者の所属する鳥取環境大学は2001 年度に開学した後発の私立大学であり、開学前の準備段階から学力の幅が広い学生が入学してくることを想定して情報処理科目の運用を行ってきた。「演習時間の確保」「スパイラルアップ方式」「フィードバックの迅速化」が科目運用の要である。
 2000 年の時点ではまだ入学時点でのパソコン利用経験者は少なかった(Windows ME とWindows 2000 の時代)ことから、「幅広い学力のPC 未経験者にいかに対応するか」が課題であった。2006 年問題はこれに加え、「幅広い経験者にいかに対応するか」という課題が加わったものととらえている。

3.1 幅広い学力のPC未経験者に対応するには?

(1)スパイラルアップ方式

 入学者の学力が均一であればほぼ同じペースで演習が進むため、演習時間のコマ数を前もって把握できる。しかし、新設の私立大学ということで入学者の学力にばらつきが大きいことが確実であった。一般に、学力が高い学生は新しい事柄をすぐに覚えて忘れない。このような学生を相手にする場合には「積み上げ方式」の演習が有効に機能する。例えば、ホームページ作成の演習であれば入門から上級まで連続五回の演習を行えばそれでよい。しかしながら、学力が低い学生はこれとは逆であり、物事を覚えるのに時間がかかり、しかも忘れる。このような学生を相手に「積み上げ式」の演習を行うと演習の初期の段階でつまずいてしまい、その後の演習が崩壊する恐れが高い。この問題に対する回答の一つとして考案したのが「スパイラルアップ方式」である。この方式では「1つのテーマを期間を空けて実施し、少しずつ難易度を上げる」という方法をとる。
 具体例で言えばこうである。「ワープロ初級」「ワープロ中級」「ワープロ上級」「電子メール初級」「電子メール中級」「電子メール上級」「ホームページ初級」「ホームページ中級」「ホームページ上級」という九つの演習内容があった時、それぞれの方式での演習順序は次のようになる。
どちらの方式であっても結局は同じだけの演習トピックをカバーするが、スパイラルアップ方式では演習の難易度が少しずつ上がっていくため学生が途中でつまずいてもフォローがしやすい。また、学生が演習の初期の段階で挫折するのを防ぐことができる。上級編で挫折する学生がいた場合、積み上げ方式では演習三回目で挫折してしまうが、スパイラルアップ方式だと挫折するのは演習七回目である。実際には演習を進めていくうちに学生の能力も向上していくため、なんとか上級編までついてきてくれる。
 加えて、スパイラルアップ方式では学生のニーズに素早く応えることが出来る。入学生がパソコンを使ってホームページを見たいと思った場合、積み上げ方式では演習七回目まで待たねばならない。これに対し、スパイラルアップ方式では初級編ではあるが演習三回目で学生のニーズに応えることが出来る。学生の関心を科目に引きつけるという意味では、このメリットも無視できない。

(2)演習時間の確保

 パソコンの入門教育では十分な演習時間を確保することが不可欠であるが、情報処理科目としては週に一回90分の演習があるだけであり、初学者にとってかなり少ない時間である。そのため、いかにして時間外演習の機会を学生に提供できるかが課題となる。
 体力のある教育機関であればコンピュータ演習室に十分な数のPC を設置し、日中だけでなく休日・夜間利用も認めるなどの対応が取れると思われるが、それなりの施設・設備・資金・スタッフが必要である。
 本学の場合、スタッフ・予算ともに潤沢ではないことから、コンピュータ演習室を整備するという方法はとらず、「ノートPCによる一人一台環境」を実現することとした。これにより、原理的には全学生が24 時間365 日いつでも演習を行うことができる[1]。さらに情報処理のあとの6 時限に「情報処理質疑応答コーナー」を開設しており、二人のTA と教員が待機している。放課後の復習で自力で解決できない問題を抱えた学生は、ここで質問することができる。

(3)フィードバックの迅速化

 学力の幅が広い学生を対象にしているため、同じ教科書・課題で演習を行っていても、2.2 節で述べたように、「楽にこなす学生」から「どうにかついて来ている学生」「ついて来られなくなった学生」まで徐々に層が分かれてくる。
 レポート作成、プレゼンテーション、資料収集など、大学生活でパソコンを利用する場面が増えていることから、学生にはなんとしても最低限のパソコンスキルを身につけてもらう必要がある。情報処理科目だけでなく他科目の履修にも影響が出ることから、教員の速やかな対応が求められる。学生が落ちこぼれてしまってから対応したのでは手遅れである。
 演習時間中に解決できる問題はその場で解決するのが最も望ましい。演習中に学生に目が行き届くよう、スタッフ一人当たりの担当学生数を増やしすぎないようにしなければならない。本学では「教員1名+TA1名で学生30~40名を担当」というスタイルでほぼ落ち着いている。また、アプリケーションのエラーや教科書・課題文の読み間違いなど、初心者が演習に行き詰まってしまう場面ではスタッフのフォローが大事である。演習中にスタッフ同士でメール・Web 掲示板などで連絡を取り合うことにより、演習中に判明した不具合や学生からの質問、補足事項を共有する工夫も行っている。
 幅広い学力の新入生を対象とする場合、科目運営上最も注意すべき点は「こちらが想定していた新入生のレベルと実際のレベルに大きなギャップがあるかどうか」という点である。ギャップを埋められないまま学期を終えてしまうことは避けなければならない。定期的にスキルの定着状況を確認し、科目の軌道修正を行う機会を設けることが不可欠である。
 本学では毎週担当教員でミーティングを行い、課題の提出状況・採点結果を確認しながら演習内容の点検、次回以降の演習で対応が必要な事項の洗い出しを行っている。スキルの定着具合を把握するうえで学生から提出されたレポートは重要な資料であり、速やかに採点・集計を行うのが望ましい。
 現在の科目運営では毎回の演習毎にレポート課題を出題し、次回の演習までに採点・集計を行って学生にコメントを返すようにしている。このやり方では演習につまずいてしまった学生のケアをすぐに行える。そのかわり、採点作業の日程にほとんど余裕がない。例えば本年度の場合、「演習(火)→レポート〆切(金)→採点(土、月)→科目打ち合わせ(火)→演習(火)」という日程で運用している。課題を作成する際は採点作業のことも考慮し、課題の内容・量・採点基準を事前によく検討しておく必要がある。

3.2 幅広いPC 経験者に対応するには?

 さしあたって来年度の情報処理科目をどのように運営したらよいか考えてみたい。教科「情報」自体がまだ始まったばかりの科目であるため、実際にどのような知識・スキルを身につけた学生が入学してくるかは来年度になってみないと分からない。そのため、今すぐにカリキュラムを変更することは賢明でない。「高校でやっているから情報処理科目は縮小・廃止」としてしまった後で、実は入学生のスキルが低いことが判明したというのでは目も当てられない。「大学生活に必要なパソコンのスキルを入学後速やかに身につけてもらう」という線は守らなければならない。
 とはいえ、大学、学部、学科によってさまざまな学生が入学してくるであろう。科目の内容を何パターンも事前に準備しておくことも現実には難しい。また、学生のスキルレベルの分布も、高校での科目情報の運用状況が安定するまでは変動することが予想されるので。従って、科目運営者の立場からは「入学生の知識・スキルレベルを素早く知り、テキスト執筆時に想定していた入学生とのギャップをいかに素早く埋めるか」が当面の課題となる。
 当面(数年間) 続くと思われるこの事態に対応するため、「アンケートによる現状把握」と「クラス分けをしない能力別指導」を提案したい。

(1)アンケートによる現状把握

 「初心者が多いと思っていたら経験者が多かった」「経験者が多いと思っていたら初心者が多かった」というミスマッチを防ぐため、来年度からの数年間は学生の「入学時」「情報処理科目の中盤」「情報処理科目の終了時」にアンケートを実施しするのが良いと思われる。
 本学では、2006 年問題対応の第一歩として、本年度(2005 年度)の「情報処理1」においてパソコンの利用年数に関するアンケートを行った(図2)。受講生291 名中168 名から回答があり(回答率58%)、その結果、パソコンの利用歴が「初めて」と答えた学生が60 名、「半年」が15 名、「1 年」が22 名、「2 年」が13 名、「3 年以上」が58 名となった。これは受講生のうち約20%の学生が3年以上の利用経験があることを意味し、初心者向けの演習メニューが適さない学生がすでに無視できない割合に達している。
 このアンケート結果と前期のレポート課題達成状況にもとづき、本年度後期の科目内容を検討しているところである。
図2: アンケート結果
Q:あなたのパソコン利用歴は?

(2) クラス分けをしない能力別指導

 「パソコン初心者にパソコンの使い方を教える」という方法論は各教育機関でこれまでに実施してきた通りでよいと思われる。問題は、中級者・上級者の増加にどう対応するかである。
 初心者を対象とした演習ではパソコンの基本操作からゆっり作業を進めていくため、経験者にとっては退屈である。しかも、いったん科目への関心を失ってしまうと、演習に来なくなったり課題を提出しないなどして単位を落とすケースが出てくる。
 学生の能力に応じて「初級」「中級」「上級」と能力別にクラスを分けて運営できれば理想であるが、これまでと同じスタッフ数で急に何パターンも科目の準備をするのは大変である。どこにスタッフの労力を注ぐべきであろうか。また、上級クラスに行ったはいいが落ちこぼれてしまった、という学生はどうすればいいであろうか。
 一番サポートが必要となるのは初級者であるから、初級者向けの科目内容・資料をまずは整備するべきである。経験者が増えそうだからといって、初級者の数が激減するわけではない。既に基本を身につけている中級者に対しては課題の難易度を調整することでクラス分けをせずとも対応が可能であると思われる。
 問題は上級者であるが、新入生のクラス分けは慎重に対応する必要がある。学生自身が「基本をマスターしている」と言っていてもアプリケーションの操作ができるというだけで、ファイルシステムの概念が分かっていない、セキュリティの知識がない、等ということは十分ありうる。実際に学生の様子を見てからのほうが安全である。
 そこで、上級者(と思われる学生)についてはまず中級者向けの内容を早いペースでやってもらい、自力で課題をこなせるのを確認した後で自由課題に取り組んでもらうのがよいのではないかと思われる。課題についていけないことが判明したらその時点で中級者のペースに落としてもらえばよい。
 自力で課題をこなした学生は既に合格基準に達していることから、後の演習については学生の裁量に任せても大きな支障はないはずである。学生の裁量を認めれば、科目担当者が個別の演習メニューを用意する必要はない。

4 まとめ

 鳥取環境大学での情報リテラシー教育の現状を紹介し課題について述べた。本学では学生全員がノートPC を所有し、持ち歩くことを前提に教育システムを構築しており、情報リテラシーの演習はそのための必須技能を習得するための必修の講義となっている。リテラシーの演習は週1 回× 28 週となっており、オチこぼれを作らずにじっくり学べるように配慮している。
 現在本学では2006 年問題にむけてカリキュラムの改訂を検討している。我々は学生の知識技能のばらつきの拡大に対応する方策が必要と考えており、本稿ではいくつかの過渡期用の案を述べた。高校での教科情報の教育状況が安定し、大学への入学者の技能レベル分布が安定して見積もれるようになる数年後には、再度のカリキュラムが必要になると考えている。
 なお、本稿で紹介した改定案はあくまでも筆者らの8月現在での意見であり、来年度からの採用が確定したものではないことに留意されたい。

参考文献

[1] 永井, 長瀧: 特集大規模分散ネットワーク環境における教育用計算機システム2.“教育用計算機環境の事例6. 必携パソコン化編”, 情報処理45 巻3 号, pp.255-258 (2004-03)
[2] 河合塾:“教科「情報」に関するアンケート結果報告”, Kei-Net mail 2005 vol.11,2005.6.28(2005.6).