TA (Teaching Assistant)の声
CALL授業におけるTAの役割
神田 麻衣子(大学院言語社会研究科 D2)
2001年度からTAとしてCALL授業に関わっているが、当初驚いたのは、パソコン操作をめぐる履修学生間の格差だった。「パソコン経験者」の学生が難なく機械を操作する一方で、「パソコン初心者」の学生は、文字入力や変換もままならず、授業課題を仕上げるために,授業内容の理解に要する努力と時間に加えて、機械操作に労力と時間を費やさなければならなかった。この時点では、外国語教育以前に、システムの利用そのものが「初心者」学生にとって決してマイナスではないとはいえ、大きな負担(精神的な面も含めて)を強いていたことは否めなかったように思う。
だが、現在、状況は明らかに変わった。新入生の大部分が入学までにパソコン操作をある程度経験しているのか、格差はあまり感じられなくなった。ここにきてようやくCALLシステムを外国語教育に有効に利用できる体制が整ったという印象を受ける。私はこれまで操作のサポートをTAの中心的役割としてきたが、これからは何が求められるようになるだろうか。CALL授業のあり方や可能性についてさまざまな議論が継続的になされているが、TAについても状況に応じたあり方が模索されなければならない時期に来ているのかもしれない。
CALLのTAを経験して感じたこと
澤田 佳克(大学院基礎工学研究科システム人間系専攻 M2)
私が半年間TAを担当して驚いたのは、英語の発音が達者な学生が多く見られたということだ。私が5年前に学部に入学した当時の私たちの英語レベルと比較すると確実に発音のレベルは上がっていると思った。そのことについて担当の先生に聞いてみると、本年度くらいから英会話などを学校以外の場所で学習した経験がある学生が徐々に入学し始めているとのことだった。私は先生のお話に納得し、またここ数年発展した英会話産業が確実に成果を挙げていることに驚いた。しかし一方で、英会話を本格的には学習した経験がない学生も多くいて、彼らは私と同じように恥ずかしさもあって英語を日本語と同じように発音してしまう。そういう学生の中には(私も含めて)英語は嫌いではないけど積極的に英会話を学習する機会がなかったという人も多くいるのではないかと思う、こういう学生に英会話を学ぶきっかけを与える意味でも、英会話のみを扱う授業を設けてもよいと思う。私は、このことはまたコンピュータ教育にも同じように当てはまると思う。コンピュータをまったく知らない学生には、コンピュータを学ぶきっかけを与えるためにも、まずはコンピュータの使い方のみを教える授業を受けさせるとよいと思う。
トラブル・メーカーとしての役割を終えた今・・・
杉浦 清文(大学院言語文化研究科 D2)
ここで私が学部生であった頃の英語の授業の回想から話を始めるのは、唐突すぎるであろうか。教官を思い悩ます生徒はどこのクラスにもいるもので、かつて私もそのトラブル・メーカーの一人であった。リスニング力を養成する授業であったが、ただ英語のテープをひたすら聴くだけで良しとするその授業の進め方に、私は納得できなかった。「リスニング力を効率的に伸ばす方法を教えて下さい!」「ムッ」とする教官。
現在、私がTAを担当している英語のクラスでは、“Listen to Me”という教材を使って授業が進められるが、この教材は本当に素晴らしい。コンピュ-ターの導入によって、語学教育は変貌を成し遂げた。ところが、それでもなおトラブル・メーカーは存在する。教官とTAの思考をとことんまで攪乱させるその憎き相手は、コンピューターである。実にパラドキシカルだ。
語学教育の効率性を追求するCALL授業。だが、その新しい外国語教育は、トラブル・メーカーの形態をも変容させた。この2年間のTAの勤務を通じて、私はトラブル・メーカーとしての役割が「私」から「コンピューター」に取って代わられる現状を目の当たりにした。「私」がトラブル・メーカーであったかつての時代に、複雑な心境ではありながらも哀愁を漂わせてしまう。
CALL教室における教育的配慮とは
松本 敬子(大学院言語文化研究科 D1)
(matsu@gs.lang.osaka-u.ac.jp)
TA (Teaching Assistant)としてCALL (Computer Assisted Language Learning)教室の語学学習に携わりながらの気付きを以下に述べる。
まず、CALL教室では、コンピュータにアクセスするだけで、出欠が確認される。出欠確認が容易なことにより、90分の授業時間を有効に活用できる。ある日、何らかの理由で授業中にリセットボタンを押して再アクセスした学生から、出欠が二重にならないかとの質問を受けたが、危惧するにはあたらなかった。
次に、英文の教材が、紙を媒介とせずファイル形式で配布される。そのため、「教科書を忘れました」の声がCALL教室では聞かれなくなった。また、配布教材に対して作成されている練習問題もファイル形式で配布される。教材はTime等の記事から作成されている。これらの“Authentic Materials” である海外の英文記事情報は、インターネットから簡単にアクセスできる環境になっている。しかし、逆にいえば、それらの翻訳もすぐ手に入りやすい環境でもあるということだ。よって、教師はTimeと年間契約をし、購読料を支払ったうえで購読可能な記事からテキストとして入手するなど、インアクセシブルな教材入手の工夫を行っている。これら工夫された“Authentic Materials”を、学生たちは、ロボワード機能やオンライン辞書機能を使用しながら読み進め、問題を解く。解答後は、学生の解答用紙も紙を媒介とせずファイル形式で回収される。そのため瞬時にして出席者全員の解答用紙の提出状況を確認できる。
このように教材を同時に配信そして解答を同時に回収することにより、時間の節約が可能であり、そのためその後の解答解説の活動への移行もスムーズである。解答解説の際には、学生一人ひとりがランダムに皆の前で発表し、教師が問いかけ、必要とあらばホワイトボードを使用して解説を行っている。それまで、解答作業時にはモニターと対峙していた学生たちが、解答解説時には、教師の顔を見ながら、教師の問いかけに対し皆で考えたり、友人のユニークな解答に対して笑ったりしている。
時間的節約、“Authentic Materials”の活用、辞書機能の活用、紙の節約といった学習支援の道具としてコンピュータへの期待は益々高まるであろう。同時に、インアクセシブルな教材探しや、TAによるサポート、授業内でどの程度コンピュータを用いるか、用いないかのバランスの取り方といった教育的配慮が、CALL教室の教育的な価値を高める鍵として不可欠な要素となるであろう。
CALLシステムを使った外国語教育について
山谷 学(大学院基礎工学研究科化学系 M2)
私は週に1度、CALLシステムを使った英語の授業のTAを担当しています。当初はCALLシステムがどういうものなのか想像もつかなかったので果たしてTAがつとまるのかどうか不安でした。しかし、実際のところCALLシステムは簡単な画面を見ながら操作でき、また動作も安定しており非常に使いやすかったです。
また、授業を受けている1回生も、私が1回生だった頃とは違ってパソコンの使い方に関して飲み込みが早く、TAである私は随分と楽をさせてもらっています。もし、私が1回生だった5年前にこの手の授業が開講されていたら、その時のTAはさぞかし苦労していたことだと思います。
今、私がTAを担当している授業では「Real Player」を利用し、動画ファイルを視聴することでリスニングの学習を進めています。こうすることで、自分のペースで学習を進めることができますし、聞き逃したところがあれば何度でも繰り返して聞くことができるなど、LL教室を利用した今までの英語の授業にはなかった数々のメリットがあります。
このような優れた学習支援システムがあれば、学生のやる気次第で、いくらでも語学力を伸ばすことができると思います。
CALL授業のTAを経験して思うこと
湯川 志保(大学院言語文化研究科 M2)
CALLのTAを経験し、次の2つの事を感じました。1つは、受講生皆さんのパソコンに対する習熟度の高さです。皆戸惑うことなく使いこなしており、パソコンの普及が進み学生の多くが使用に慣れている時代だと実感しました。私自身は3回生くらいまで原稿用紙に手書きでレポートを提出していましたが、今はワード等で打った文書であることが基本となっています。余談ですが、パソコンでの文書作りはとても楽ですが、少しの手違いでデータが消えてしまう事もあるので必ずバックアップをとる等の注意が必要だと思います。(私は完成間近の卒業論文を消失し呆然とした経験があります。そんなドジは私だけでしょうか・・)2つ目はCALLの外国語授業は様々なレベルの学習で利用できる応用性があるため、使い方次第で色んな授業が出来、授業運びに工夫のし甲斐があるという事です。担当した授業はインターネット上で興味のある英文ニュースを探し、日本語で要約し、その要約文に基づいて次は自分で英訳するという日英語双方のリーディングとライティングの能力を高めることを目的としていました。これは文法などの語学の知識を総動員し磨きをかけるのにとても良い方法だと思います。語学とパソコンは就職の際にも問われる能力であると言います。両方が同時に身につく授業は大変有益なのではないかと思いました。