保健学科における情報活用基礎


高橋 育代(大学院医学系研究科 保健学専攻)

1. はじめに

 私は、阪大を卒業後、看護師として病院で働いておりましたが、昨年度より保健学科の助手になり、今年度初めて医学部保健学科1年次前期の「情報活用基礎」の授業を担当しました。私は保健学科の1期生で、サイバーメディアセンターの情報教育用計算機システムがNextの時代にこの授業を受講しました。“マウスの使い方”や“キーボードへの手の置き方”から習うなど、授業は今よりもさらに基本的な内容であったように思いますが、コンピュータに全く関心のなかった私は、その授業にほとんどついていけず、コンピュータはわけのわからないやっかいなものでしかありませんでした。授業中に、しばしば「コンピュータなんて嫌い!」という叫び声が聞こえてくると、その時の自分を思いだし妙に共感してしまいます。
 そんな私が、10年前に教えてくださった先生方と一緒にこの授業を担当することになり、初めて、Linuxやサイバーメディアセンターの存在を知りました。そこで、学生時代にほとんど活用することのなかったセンターの様々な機能を知り、なんと便利なものが大学にあったのだろうと今更ながら感銘を受けました。コンピュータが苦手だと思っている人も積極的に活用されることをお勧めしたいと思います。

2. 「情報活用基礎」の授業内容

 保健学科における「情報活用基礎」の授業は、電子メールや情報検索エンジン、表計算や図形ソフト等の諸機能を活用し、自分のホームページを作成することを通して、“コンピュータに親しむ”ことが主な目的となっています。そのため、普段、コンピュータに触れる機会のある学生には少々手持ちぶさたなところもあるようですが、まだ多くの学生にとってコンピュータは遠い存在であったようで、この授業が、今後コンピュータを活用していくうえでの動機づけになればと思います。

3. 看護と情報

 近年、臨床看護の現場でも、電子カルテ等に見られる記録物のコンピュータ化が推進されています。加えて、看護研究として表計算や統計ソフトを用いてデータを分析し学会等でプレゼンテーションをする機会も増えてきました。今やどこの分野でも、コンピュータは使えて当然という時代になってきているのかもしれません。また、インフォームドコンセントやセカンドオピニオンの考えが普及し、医療を受ける側もまた、病気や治療に関するあらゆる情報、正しい情報、他者とのネットワークを求めて、インターネットを利用する人が非常に多くなってきています。しかし、実際のところはインターネットにおける膨大な情報に翻弄されてしまうことも多々あるようです。情報を得るだけでなく、情報の正確性や適切性を判断し取捨選択するといった、情報を読みとる力が必要になってきていると言えます。
 今年の4月から高校教育において、情報を活用するための知識と能力、いわゆる“情報リテラシー”の育成を目的とした「情報」の授業が必修科目となりました。今後は、保健学科の情報活用基礎の授業も、学生の学習レディネスに応じて内容を変えていくと同時に、コンピュータを通して、プレゼンテーションの能力やデータの分析能力、情報を読みとる力、情報に対するモラル等を高められるような教育が求められていくのではないかと思います。
 ところで、看護の技術教育では、清拭や移動の介助といった日常的なケアの方法“How to”だけではなく、その方法を用いる根拠“Evidence”が重要視されています。これは、根拠を理解することでケアの目的や方法が明確となり、様々な状況に合わせて適切に技術を応用することができるという考えからですが、コンピュータを活用する上でも同様のことが言えるのではないかと思います。私は、「情報活用基礎」の授業の中で、作業中に突然画面が消えるなどの自分には理解できない現象に多々遭遇し、なぜそれが起こるのかが分からず戸惑いました。その時、自分が“How to”だけでコンピュータを使っていたことを認識しました。この機会に、コンピュータやネットワーク、情報などに関する根本的なしくみや問題点を知り、より適切に活用できるようになりたいと思います。
 最後に、一緒に看護学専攻の学生を担当してくださった窪田先生やTAの水本さん、佐々木さんには、本当にいろいろとサポートしていただきました。ありがとうございました。