Webトレーニングとオンライン学習
町田 貴史 (サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門)
(machida@ime.cmc.)
1. はじめに
私は現在、人間科学部の1回生に対して「情報活用基礎」という授業を担当しています。この授業では、今年入学した受講生が本学の情報教育システムをこれから使用する上で、計算機の使い方はもちろん、情報社会の中で注意すべきことや情報倫理などの演習を主体にして教えています。現在のようにネットワーク環境が整備され、Webページを閲覧することが携帯電話などで可能になっていても、やはり計算機に触れたことのない生徒はいます。そのため、1つの操作を教えるのにも、多くの時間を要する場合があります。計算機は情報社会の中で物事を円滑に進めるための道具です。そのため、その道具に早い段階で慣れる必要があります。しかしながら、慣れるためには計算機に触れる機会を増やすことが第一条件になると思います。計算機について興味を持ってもらえなければ、日々の計算機を使用した授業が苦痛になっていくことでしょう。そのような問題に対して、なんとか学生の情報社会に関する知識を高めようと、昨年度サイバーメディアセンターはWebCTというオンライン学習・授業支援ソフトウェアを導入いたしました。本特集ではWebCTの簡単な紹介とその機能や可能性について述べてみようと思います。これを機に、計算機に慣れた学生もオンライン学習を行うことで計算機に対する知識をさらに高いレベルへ昇華させることへの手助けになればと思います。
2. WebCTの紹介と基本的な機能
昨年度、WebCT(Web Course Tool)という授業支援ソフトウェアの導入を行いました。この記事をご覧になっている方の中で、昨年度の授業でご使用いただいた教官の方もいらっしゃると思いますが、簡単にWebCTについて説明をしたいと思います。
WebCTはカナダのブリティッシュコロンビア大学で開発されたWebを用いたコース設計、開発、管理を容易にする統合コース管理ソフトウェアで、全米大学でシェアトップのe-Learningシステムです。このソフトウェアは授業支援を目的としたオンライン学習に最適なソフトウェアだと言えます。それを裏付ける証拠として、カナダをはじめ81の国で使用されており、実に2600以上の教育機関で利用されていることが挙げられます。最近では、国内でも導入事例が増加する傾向にあります。また、オンライン学習だけでなく、教室の中で講義支援の手段として利用することも可能です。また、多くの機能を持っていますが、コースの管理者はその中から機能を選んで使うことができ、教官が独自の使い方をすることができます。対面講義などにおいては講義の補完的な教材、学習環境の提供を目的として利用されています。さらに、Webをベースとしたシステムであるため、遠隔教育にも柔軟に対応することが可能であることや、技術的なことに精通していない教官でもこれまで作成した授業用のHTML教材などを再利用することでコンテンツの作成が容易であるといった特徴があります。以下はWebCTにおける代表的な機能例です。
- 授業の配布資料の作成
- 小テスト機能によるオンライン学習
(これは自動的に採点され、生徒の自習に向いています)
- レポートなどの提出、採点機能
- 掲示板による授業に対する質疑応答
- 教官、学生個人のスケジュール機能
このほかにも授業を行う上での様々な機能が含まれています。詳しくは本特集の最後に関連URLとして掲載しているサイトなどで紹介されています。本学では昨年度と今年度の人間科学部1年次前期の「情報活用基礎」で使用していました。これについては次の章で説明したいと思います。
次に、学生がWebCTを使用する場合について考えていきたいと思います。まず、計算機に慣れていないということで1回生について考えてみると、計算機に触れる機会を増やすということと、オンライン学習としてWebCTを活用することで、本学の情報教育計算機の使い方や一般的な情報リテラシーに関する知識が自然と身につくと考えられます。特に、2回生以上の学生は自宅に計算機を持っていることが多いことや現在の低価格ネットワーク接続サービスなどにより、自宅でもオンライン学習が行える環境にあります。そのため、教材や演習問題などをWebCTに組み込んでおくことで、より高い学習効果が得られると期待できます。つまり、WebCTは学生の自己学習意欲を促進することが期待でき、計算機に対してより深く学ぶことが可能だと考えられます。このようなネットワーク上の教育コンテンツによるオンライン学習のように、自由に講義に参加できるという考えはすでに海外で取り入れられており、国内でも放送大学のような参加型の授業が多く、WebCTの活用が期待できると考えています。
最後に、教官側について考えていきます。教官の方はどのような授業であれ、講義のために教材の作成を行っています。そして、最近ではそれらをWeb上にアップロードして学生に提示するというスタイルが一般的かもしれません。そのような場合、サーバをセットアップしてというような煩雑な作業を強いられます。しかし、WebCTはその機能を持っており、容易に授業資料などの公開ができます。また、そうすることにより、全学で共通する科目、例えば「情報活用基礎」の授業などでは、教官の方達が作成した資料を統合することができます。このおかげで、これまで教官が独自で作っていた講義資料などがより精錬されたものになると考えています。このように少しでも教官の方の労力を軽減するということも言えますが、より講義資料の作成に集中でき、受講生にとってより洗練された教材で学ぶことによる教育効果は高まると考えています。
以上のように、WebCTを用いることによって教育効果は一層高くなることと期待しています。
3. WebCTの利用と今後
この章では、昨年度と今年度の人間科学部で使用されたWebCTの使い方を実例を交えながら、簡単に説明していきたいと思います。まず、図1は授業教材の閲覧の様子を示しています。ここではこれからどのようなことを学んでいくのかが明確になっています。図2は掲示板です。これは授業中に聞けなかった質問や教官からのお知らせなどを掲示するために利用されます。次の2つの機能についてですが、人間科学部の「情報活用基礎」では、学生をグループに分け、グループごとにあるテーマを与え、それについてプレゼンテーションを行ってもらうということをカリキュラムに取り入れています。そこで、発表グループ以外の学生にはそのプレゼンテーションを採点してもらうようにしています。こうすることで、採点者側はどのようなことに気をつければよいのかということの確認が行え、発表に対する質問などを考える練習になると考えます。採点はWebCTのアンケート機能を利用しており、図3がその画面を表しています。また、図4は採点された点数の集計結果です。この結果を発表者側は確認することによって、自分達の発表がどのようであったかを確認することができ、今後の発表についてのよい練習になると考えます。
一方、教官側は、授業教材に関しては、これまで教官の方が作成していたものをHTML形式にし、WebCTにアップロードすることで学生は自由に閲覧することが可能です。また、プレゼンテーションの採点では、アンケートの作成を行いWebCTに登録するだけで、採点ツールを容易に作成することが可能です。また、これまで煩雑な作業であった採点結果の集計作業に関しても、WebCT内で自動的に行うため、授業資料の作成により集中することができます。以上の機能はWebCTが標準で持っている機能であり、教官はその機能を容易に使用することができます。
このように、実際の授業の現場で使用した結果、最初はアカウントやパスワードの配布に関して煩雑な作業が必要となるものの、使い方に慣れてくると授業に対する理解が深まっていくことが期待できます。さらに、WebCTはSGIのMediabaseとの連携を考慮して設計されたものであるため、VoD (Video on Demand) に関して柔軟に対応可能です。そこで、当センターでは今後ビデオカメラを利用したコンテンツ作成を行う予定であり、より充実した授業形態がとれるものと考えています。WebCTの活用により、学生が計算機の操作や情報社会での問題に対して総合的な能力を身につけてもらえるように期待しています。

図1 授業教材の閲覧 図2 掲示板

図3 プレゼンテーション採点 図4プレゼンテーション採点結果
参考URL
[1] http://www.webct.com
[2] http://www.webct.jp