e-learningの必要性が叫ばれて久しい。しかし、一口にe-learningといってもいろいろな形態があるだろう。たとえば、コースウェアを用いた自学自習型コンピュータ教育、SCSやインターネットを使って行う遠隔教育、あるいは本センターで行われているようなコンピュータを授業の補助として使った教育である。
大学におけるe-learningがこれほど世間から期待されている背景にはさまざまな思惑がある。ひとつには、これまでの一生一社という雇用形態が大きく崩れようとする中、米国のようにスキルをあげながら、職を変えていくスパイラル型の雇用形態が考えられる。この仕事から仕事へ移る中で、スキルをあげるための再教育(いわゆるリカレント教育)の機会が必要とされ、それを大学に求めることが多くなると思われる。このとき、忙しい社会人のための効率的な授業形態が求められ、それに答えるひとつがe-learningであろう。
もうひとつは大学におけるブランド力の強化である。大学は今後研究や教育の面でよりいっそう厳しい競争にさらされることになる。その中でよりよい学生を全世界から囲い込むための手法として、e-learningが使われる。e-learningによりWEBを通して世界中に対して、よりよい教育教材を容易に提供することができるようになる。これによって、世界中にブランド力を高めながら、優秀な学生を囲い込んでいくのである。
また、e-learningの活用により、先の社会人学習から、自宅学習までさまざまな教育機会を捉えることができる。これもまた、社会の要請にこたえることになるのである。
サイバーメディアセンターでは、現在さまざまな形でe-learningにかかわっている。CALLやメディア教育システムはe-learningを支えるインフラの提供を行っている。教官の方々が簡単にe-learningを行えるためのツールとしてWebCTの導入を行ったり、WebOCMといった独自ツールの開発を行っている。また、本学国際公共政策研究科と協力してタイ国タマサート大SIITへの遠隔教育を行ったりしている。また、本学の映像情報のポータルとして早くから「阪大TV」を本学ホームページに立ち上げ、開放講座の一部や新入生対象の記念講義、各学部の紹介ビデオなどを発信している。本特集号にもそれらの取り組みが紹介されている。
しかし、e-learningの取り組みはまだまだ始まったばかりであり、社会の要請には一向に応えられていないといえる。オンラインでの教材の準備には多大な労力とスキルを要求され、さらに推進する情熱を持った人材は少ない。コースウェアの開発をどのように進めるか、e-learningにかかる人手をどのように確保するか、費用はどのように確保するか、など問題は山積みである。本センターはe-learningのためのインフラやソフトウェアの整備に努めるとともに、そのための人材の開発、啓蒙活動に取り組んでいき、e-learning駆け込み寺としての役割を果たす所存である。E-learningは教育のIT化であり、それによって教育の多様化に効率的に応える手段である。本特集号がe-learning推進のきっかけとなれば幸いである。