授業担当教官の声
情報化学演習を担当して
長山 智男(工学研究科 物質・生命工学専攻)
応用自然科学科応用化学コース3年次の「情報化学演習」を担当して2年目になります。この授業はFORTRANのプログラミングの演習を行うのですが、私自身プログラミング言語と言えばBASICしか経験が無く、FORTRANは全く経験がありませんでした。このために、昨年度は何をしているのかさっぱりわからず、学生と一緒に勉強する側にいました。それに加え、センターのOSがNeXTだったことは、阪大出身でない私にとって未知の領域でした。実際に私が使っているOSはMacであり、研究室の装置をコントロールするのに用いているのはWindowsがほとんどです。こんな状況でも、NeXTに触れてみると比較的使いやすいOSであるなと実感しておりました。
さて、初年度の授業を終えて実感したのが、学生がコンピュータに対する知識差があることでした。一回目の演習は端末の「基本操作」を行うのですが、「そんなことはもう知っている」と言う顔でインターネットを楽しんでいる者、何をして良いのかわからず画面を見つめている者など、どのような指導をして良いのかと私の方が困惑するほどでした。彼らは入学当初にセンターのUIDを取得し、メールやインターネットを自由に使ってよいはずです。それを能動的かつ積極的に行ってきたかによって、このような差が出ていると思いました。内容がプログラミングになってくると、その差は歴然としてきます。授業形態は、最初にその日の演習内容について教官画面とホワイトボードを使って説明し、課題を配布し自由にプログラミングをするというものです。説明が終わり学生の間を歩いていると、まず聞く声が「何をしたらいいんでしょう?」です。全く何も知らない者にとってプログラムを作ることは大変なことだと思います。しかし馴れてくると学生もやりてなもので、メールで解答プログラムを配信するなど、少し感心してしまう面も現れてきました(これは良いことでは無いのですが)。授業が終了したときに感じたのは、「情報化学演習」というFORTRANのプログラミングの授業ではあるが、もっと学生にコンピュータを扱うことに馴れてもらって能動的に参加できる授業にしたいということでした。
そこで、2年目にあたり試験的に行ってみようと思ったのが、Webブラウザーを使った授業です。授業内容をHTMLで作成しWebサイトに載せて、授業の最初にこのホームページ[1]にアクセスしてもらい、画面を見ながら演習内容説明を行ってみました。課題の配布や提出もプリントアウトしたものを用いておりましたが、ホームページから見られるようにしてメールでの提出も受け入れました。最初はどうなるだろうかと不安でしたが、「聞き逃した所をもう一度見ることが出来る」「欠席してしまった日の内容も他の時間に確認することが出来る」といった声を聞き少し安心しました。また、メールでの課題提出は、質問事項を交えて学生個人にあった個別の指導が出来きる、授業に対する本音が聞けると言う面でも良かったと感じています。ただし、悪い面も無いとは言えませんでした。ホームページを載せたのが私の所属する専攻のサーバでしたので、アップロードする時間が遅くても授業の15分くらい前になります。馴れてきた学生は、授業が始まる前に既に課題を終わらせてしまっていることがありました。こうした中、授業は無事(?)に終了したのですが、本年度で戸惑った点が一つあります。センターのOSが一新されLinuxに変わったことです。OSの変更そのものはさほど問題では無かったのですが、これによって昨年までプログラミングに使用していたソフトウエア「StepJump」が初期に使えなかったことです(最終的にも使用しませんでしたが)。ターミナルからコマンド入力でコンパイルをするという作業を学生に教えるという作業が一つ増えました。逆に言えばターミナルの使い方を覚えてもらえるという点では良かったのかもしれません。2年目を終えて(まだテストが残されているが)、少しではあるが「学生が能動的に授業に参加」してきたのではと感じました。
最後に、センターの先生の皆様方には、本年度OS変更を含め利用環境整備など多くのご苦労があったかと思います。我々利用者は「要望」することばかりで、「協力」することがなかった(私だけかもしれませんが)ことを心苦しく思っております。今後は、情報処理教育に微力ながらお役に立てるよう努力していきたいと思っております。今回、「利用者の声」と言う形で執筆依頼を受けたのですが、内容が担当授業の反省となり「広報」の趣旨からはずれているのかもしれませんが、本稿が何かのご参考になれば幸いです。
[1] http://www.mls.eng.osaka-u.ac.jp/~mol_sys/nagayama/jyouhou/jyouhou.html