新しい教育用計算機システムの特徴
情報教育用計算機システム
情報メディア研究部門
2000年3月に情報教育用計算機システムの更新を行った。新システムは1981年に情報処理教育センターが設立されてから第五世代目にあたる。システム更新のねらいと、導入された新システムについて紹介する。
1.はじめに
1.1機種変更の経緯
情報処理教育センターは、1981年に学内共同教育研究施設として発足した。当初の10年はメインフレームと呼ばれる汎用計算機(1982~86年度:三菱電機~MELCOM
COSMO 900II、1987~91年度:日本アイ・ビー・エム~IBM3090)とキャラクタ端末による集中システムであった。1992年度からは、ワークステーションからなる分散システム(1992~1995年度:NeXT
station 388台、1996~1999年度:SONY Quarter-L 500台)に移行した。 1992年から8年間にわたり使用した基本ソフトウェアNEXTSTEPによる計算機環境は、文系・理系の双方に広く支持されてきたが、計算機の処理能力の不足や、Java等の新しいソフトウェア技術に対する対応の遅れの問題があり、2000年2月をもって機種更新をすることになった。新システムの仕様は、1998年7月から検討をはじめた。各学部の委員と情報処理教育センターの全教官の参加するメーリングリストを用意し、どのような授業をしたいかなどから議論し、最終的に次のような要求仕様を作成した。
1.2新システムの要求仕様
新システムの構成は、従来と同様、サーバ群、クライアント群(利用者計算機)、およびネットワークからなる分散環境を採用することとした。
サーバ系はもともとUNIX により構築していたので、これまでの技術蓄積を生かすことのできるUNIXを採用することで落ち着いた。
利用者計算機については、NeXT社がApple社
に買収されてNEXTSTEP がサポート対象外となったことから、基本ソフトウェア(OS)も新しく検討することになった。種々の検討の結果、遠隔管理をはじめとする技術蓄積を生かすため、UNIX系のOSを採用することとしたが、特定のUNIXに限定しない仕様とした。また、平日の午前10時半頃から午後6時頃までの間は教室内の計算機がほぼ満席になる慢性的な計算機不足状態であり、利用者・教官の双方から計算機台数増加の要求は強かった。
新システムの目標は以下のとおりである。
- 利用者計算機の台数を増やす(500台→700台)。
- 利用者計算機には UNIX系の OS を使用する。必要となるアプリケーションはどのOSでもほぼ同じであり、ワープロ、メール、Webブラウザ、描画・作図、Mathematica、SAS、\LaTeX、各種プログラミング言語のコンパイラなどである。
- 利用者計算機のハードウェア能力を増強する。
- CPU: 15 SPECint95以上 (Pentium II 450MHz以上に相当)
- メモリ: 128MB以上
- ネットワーク: 100BASE-TX
- 画面解像度: 1280x1024 ピクセル %、24bitカラー表示
- リムーバブルメディア: 100MB以上の容量
- サーバの能力を増強する。
- 利用者毎のディスク割当量 20MB など
- ネットワークの能力を増強する。
-幹線およびサーバは800Megabit/sec 以上など
新システムの入札では日本アイ・ビー・エム(株)が落札し、RS/6000 サーバワークステーション群Linuxが稼働する``IntelliStation E Pro" 700台およびネットワーク機器からなるシステムが2000年3月1日に引き渡された。
また、1999年度補正予算により、CALL(Computer Assisted LanguageLearning)システムとの連携のためのメールサーバ(MiraPoint社製)、ネットワーク機器、および利用者計算機の追加分としてのディスクレスPC(高岳製作所製
MiNT-PC) 60台などを3月に購入した。
以下では、これら新規に導入した機器で構成したシステムについて説明する。
2.システムの構成
2.1利用者計算機
利用者が直接操作して、多くのアプリケーションを作動させる計算機であり、IntelliStationは700台、ディスクレスPCは60台ある。主な仕様は以下の通りである。なお、ディスクレスPCは、豊中教育実習棟第4教室および共通教育機構A棟2Fコミュニケーションスペースに設置してある。
- 基本ソフトウェア(OS)
両機種ともOSにTurboLinux Workstation日本語版6.0を採用している。
- CPU、記憶装置
IntelliStationは、PentiumIII 500MHzのCPU、512KBの二次キャッシュ、128MBの主記憶、13GBのハードディスク容量をもつ。ディスクレスPCは、Celeron433MHzのCPU、256MBの主記憶をもち、ハードディスクは持たない構成である(このことから「ディスクレス」と呼んでいる)。
- リムーバブル記憶装置
IntelliStation 700台すべてに、フロッピーディスク(1.44MB)およびZIPドライブ(100MB)を搭載している。このうち、65台にはさらに3.5インチMOドライブ(640MB)を装備し、残りの635台にはMOの代りにCDROMドライブを装備している。個人のパソコンとのデータ交換を考慮して、これらすべてのドライブで「DOS形式」の記憶媒体を標準として扱えるように、OSを設定してある。なお、ディスクレスPCにはリムーバブル記憶装置は無い。
- ディスプレイ装置
IntelliStationには、17インチフラットパネルの高解像度カラーディスプレイを用いている。40台以上設置されている教室においては、弱視の利用者の利便のために液晶ディスプレイおよび21インチディスプレイも設置している。解像度はSXGA(1280x1024)である。ディスクレスPCには、すべて15インチ液晶ディスプレイを接続しており、解像度はXGA(1024x768)である。
- Disk On Chip
ディスクレスPCの本体内には、DOC(Disk On Chip)があり、基本ソフトウェアのコアとなる部分が書き込まれて保持されている。その他のプログラムは、すべてサーバからネットワークを経由して読み込んで動作するという構成である。一般にトラブルの大きな要因の一つであるハードディスクを持たないため、耐故障性に優れている。
- セキュリティ対策
すべての利用者計算機には、盗難防止のために南京錠と鎖を用いて、ハードウェア的なセキュリティ対策を施している。また、リムーバブルディスクからのブート抑止設定やBIOSのパスワード設定などによって、ソフトウェア的なシステム保護をしている。
- 遠隔操作機能
利用者計算機は、ネットワークを経由した遠隔操作が可能である。現在、センター内の教室に設置されている利用者計算機は、サーバ計算機上にあらかじめ設定した時間スケジュールに従って、利用開始時間前に遠隔から一斉ブート(Wake
OnLan機能)が行われ、利用時間終了後に一斉シャットダウンが行われる。これにより、電力を節減し管理の手間を削減している。このほか、ハードディスク内のソフトウェアに対する修正情報の適用作業や、利用者計算機の稼働状況記録の収集作業なども遠隔から自動処理している。
2.2プリンタシステム
ネットワークを経由し、lpdプロトコルにて出力できるモノクロ・A4のページプリンタを導入した。センターの教室に対しては、30席以上の教室には4台、未満の教室については2台設置した。分散端末に対しては、およそ10台の利用者計算機に対して1台の割合でプリンタを配置した。
各利用者計算機からは、同室内のどのプリンタにも出力可能である。いつどこへ何ページ出力したかをサーバ側で記録しており、出力枚数が一定限度を超えた学生に対しては、出力枚数の制限を課すことも考えている。
また、今回導入したプリンタには、紙切れ、紙詰まりなどのプリンタの状態をリモートで監視する機能があり、それを利用したプリンタ監視システムも構築中である。
2.3サーバ計算機群
サーバ計算機は、果たすべき機能ごとに構成される。図3は、豊中教育実習棟のサーバ室におけるサーバ群のおよそ半分とネットワーク機器である。
2.3.1ファイルサーバ
利用者のファイル領域を提供するUNIXサーバである。機種は、RS/6000モデル7026-H70で、豊中教育実習棟および吹田教育実習棟に一台づつ設置している。ディスク容量は、豊中に182GB、吹田に91GBある。これにより、利用者一人当たり約20MBのファイル領域を提供している。また、信頼性・可用性を向上させるために、RAID5による冗長化を行っている。
ファイルサーバは、NFS(Network File System)によるファイルサービスを行う。性能は、12,000
SPECsfs 97 V2以上である。主記憶容量は、豊中3GB、吹田1GBである。豊中および吹田ともに、64bitCPUである340MHzのRS64IIを4基搭載している。
2.3.2アプリケーションサーバ
本サーバは、SASなどのアプリケーションプログラムを動作させるCPUサーバであり、豊中教育実習棟に一台設置されている。機種は、RS/6000モデル7026-H70で、CPU性能は573SPECint\_rate95、主記憶は4GBで、多数の利用者計算機からの実効要求に耐える。
現在、サーバ計算機(OSはAIX)用のコンパイラとして、``XLFortran(Fortran90''
と ``C for AIX''(ANSI-C)を提供しており、利用者は必要に応じてここにリモートログインして利用することもできる。SASに関しては、
X window system上のGUIを経由して遠隔実行を可能にしている。
2.3.3電子メールサーバ
利用者計算機からの電子メール利用を可能とするためのサーバであり、豊中教育実習棟に一台設置されている。機種は、Mirapoint社製のM1000
(CPUはIntel400MHz)。ディスク容量62GBである。ディスクは、耐故障性を高めるため、RAID1+5による冗長化を行っている。
旧計算機システムでは、利用者計算機から電子メールサーバのスプール領域をNFS(Network
File System)でアクセスする設定を採用していた。これにより、各人のメールの本体は、サーバのスプール領域から利用者のホームディレクトリ下に転送された。
新システムでは、IMAP (Internet Message Access Protocol)を用いており、特に利用者が転送要求を行わない限り、すべての着信メールは電子メールサーバ内部のディスクに保管される。CALLシステムの利用者計算機からも、この電子メールサーバを使えるようにする予定である。
2.3.4電子ニュースサーバ
電子ニュースサーバは、利用者計算機に対して電子メールの閲覧および投稿を可能とするためのサーバであり、豊中教育実習棟に一台設置されている。機種は、RS/6000モデル7043-150で、CPUはPowerPC604e
375MHz(CPU性能は135SPECint\_rate95)、主記憶は512MBである。ニュース保管用ハードディスクの容量は9GBである。
2.3.5WWWサーバ
旧システムでは、アプリケーションサーバでWWWサービスを行ってきたが、利用者の多くがWebコンテンツを作成するようになったので、それらによるサーバへの負荷の増大に対応するため、新たにHTTP(Hyper
Text Transfer Protocol)サービスを行うサーバを導入した。機種は、ニュースサーバと同じである。
2.3.6Proxyサーバ
Proxyサーバは、利用者計算機から外部ネットワークの資源(例えばWebサイト)にアクセスするためのゲートウェイとして機能するとともに、Webページの内容を一時的に保管して同じページを見たいという要求が来たときに、高速な処理ができるようにするキャッシュ機能も持つ。豊中教育実習棟に一台設置されている。機種はRS/6000モデル7043-260で、CPUはPower3
200MHz(CPU性能は118SPECint\_rate95)、主記憶は1GBである。データ保管用ハードディスクは9GBの容量で、毎秒40MB以上の高速データ転送が可能である。
2.4ネットワークシステム
システム構成
豊中地区と吹田地区には、教室系、大口分散系(利用者計算機15台以上)および小口分散系(15台未満)の3種類のネットワーク接続がある。そこでそれぞれの地区の教育実習棟(旧情報処理教育センターの建物)のサーバ室に、大型のGbE(Gigabit
Ethernet)スイッチを配置した。各教室と15台以上の分散配置端末室にはGbEスイッチを設置して、サーバ室との間を既設の光ファイバ(GIファ
イバ)を用いて接続し、15台未満の分散配置端末室には100BASE-TXのイーサスイッチを設置して、サーバ室との間をODINS(学内LAN)を用いたVLANで接続している。また、豊中地区と吹田地区の間も、ODINSを用いた高速VLAN
接続としている。
この構成では、サーバに数多くのネットワークインターフェイスが必須となるが、大型のイーサスイッチの
VLAN 機能および Layer3 の機能とサーバ計算機のインターフェイスエイリアス機能を使い、物理的には一つのインターフェイスで実現している。これは、ファイルサーバと利用者計算機との間の通信量がかなりの部分を占めること、および利用者計算機のWake
On Lan 機能を使うたためにルーティング機能(layer3)ではなくスイッチング機能(layer2)だけでこれらの通信ができることを考慮したものである。
各VLANには複数のアドレス空間を割り当て、プリンタとHUBのSNMPエージェントを論理的に別のネットワークとしている。これにより、利用者計算機からプリンタやHUBに直接アクセスすることを禁止できる。また、印刷要求を必ずサーバを経由させることによって印刷枚数を確実に取得できている。
外部との接続
インターネットとの接続はProxyサーバを経由するものに限り、利用者計算機にはプライベートアドレス(RFC1918)を割り振り、インターネットへの到達性を持つサーバ(プロキシ、外向きメール)だけを含むネットワークをさらに別途設けている。これにより、利用者のインターネットへのアクセスがサーバ経由のものに制限できるため、セキュリティの確保などが容易となる。メールサーバに関しては、CALLシステム(これも内部に閉じたシステム)からのアクセスを許す必要があったため、別途専用のネットワークを設け、両方のシステムに接続した。また、メールサーバが複数のシステムからアクセスされることを考慮し、メールをすべてサーバ側に持たせるIMAPを利用することにしたため、メールサーバにはMiraPoint社の専用ハードウェアを使用している。
3.ソフトウェア
利用者計算機では、現在TurboLinux 6.0 workstationを基本ソフトウェアとして用いている。デスクトップ環境のユーザインターフェイ
スにはGNOME、ウィンドウマネージャにはsawfish、ファイルマネージャには gmc
をそれぞれ採用し、初心者にも比較的使い易い環境を提供している。
メール、WWWブラウザなど
電子メール・電子ニュース・WWWブラウザとして、Netscape Communicator を採用し、電子メールは
IMAP でアクセスするようにしている。
オフィスツール(ワープロ、表計算、プレゼンテーションなど)
ワープロ・表計算・作図・プレゼンテーションなどを含む統合アプリケーションとして、Applixware
を導入している。Applixware は、Microsoft社のOfficeファイル(Wordドキュメント形式やExcelブック形式)を読み書きする機能があり、内容が英語であれば互換性がある。しかし、日本語版Officeで作成されたファイルはオープンする際にエラーが発生する場合も多く、センターでは修正情報を適用するなどの処置を施しているものの互換性はまだ不十分であ
る。
別のオフィスツールとして、Sun Microsystems社のStarOffice英語版も利用可能である\footnote{日本版発表時には名称がSunOfiiceに変更が予定されている。}。StarOfficeも、Microsoft社のOfficeファイルを取り扱うことが可能であるが、残念ながらまだ日本語には対応していない。また、StarOfficeを利用すると、利用者の個人ディスクに約10MBの設定ファイルを生成するので、センターはこの利用に関してはアナウンスしていない。
日本語入力
オムロンソフトウェア(株)のWnn6を導入し、Xwnmo というフロントエンドプログラムを使用して日本語入力ができるようにしている。標準のキーバインドには「Microsoft
IME風」を選択しているが、利用者の好みに応じて変更できる。なお、郵便番号辞書を利用するには主記憶が多く必要であるため、使用しないように設定している。また、XEmacsではeggなどを用いてWnn6を利用することができる。
プログラミング環境
C、Pascal、 Fortran などを提供している。主にGNU をはじめとするフリーソフトウェアを利用者計算機上に導入してある。
数式処理ソフト、統計パッケージ
数式処理ソフトのMathematica は、すべての利用者計算機で同時に利用できる。また、統計パッケージのSASは、アプリケーションサーバ上で利用し、利用者計算機側のグラフィカルインターフェイスを開発した。
その他
現在、おしらせパネル、使用リソース確認ツール、\LaTeX 統合環境、リムバーブルメディアのフォーマットツールなどを作成済みであり、プリンタ選択ツールや授業支援システムなどを作成中である。これらのアプリケーションの作成には、Web(CGI)やPerl/Tk、Ruby/GTK
などのスクリプト言語を中心に用いている。
TurboLinux などの商用のパッケージでは、いわゆるインターネットサーバ用のアプリケーションなども数多く含まれており、導入に際しては、すべてのRPM
パッケージから不要なものを取り除き、setuid/setgid ビットの立っているプログラムに関しては細心の調査を行った。さらに、パッケージの標準設定は個人使用を前提としており、多くの設定変更などを施す必要もあった。特に、個人の持つ設定ファイルに依存している部分に後から変更を加えることが難しいため、出来る限りシステム設定で済むように考慮したが、完全に取り除くことはできていない。
表1:アプリケーションプログラム
| |
種別 |
旧システム |
新システム |
| 通信 |
電子メール
電子ニュース
WWWブラウザ |
Mail
RadicalNews, NewsBase
OmniWeb |
Netscape Messenger
Netscape Messenger
Netscape Navigator |
| プログラミング |
C
C++
PASCAL
FORTRAN
Java |
cc
g++、cc++
gpc
g77
なし |
gcc
gpp
gpc
fort77
javac |
| 文書処理 |
かな漢字変換
日本語エディタ
日本語ワープロ
LATEX
LATEX統合環境 |
CLARE-J
Edit, Emacs
文机, Edit
jlatex, platex
EasyTeXBuilder |
Wnn6
gEdit, mgEdit, XEmacs
Applixワード
jlatex, platex
LaTeX Launcher |
| グラフィックス |
作図ツール
描画ツール
画像処理 |
Draw, DiagramJ
WetPaint
ToyViewer |
Applixグラフィックス, Tgif
GIMP
GIMP, Electric Eyes |
| 授業支援システム |
学生支援 |
Student |
作成中 |
| 教官用 |
Teacher |
作成中 |
| 辞書サービス |
英英辞典
広辞苑、研究社英和・和英 |
Webster
Dictionary |
なし
Netscape Navigator で利用可能 |
| その他 |
プレゼンテーション
HTMLエディタ
PDFビューア
表計算
数式処理
統計処理
漢字コード変換 |
LightShow
なし
なし
LQ, Parasheet, Wingz
Mathematica
SAS
NeConv |
Applixプレゼンテーション
Netscape Composer, ApplixHTMLエディタ
Acrobat Reader
Applixスプレッドシート
Mathematica
SAS
HaConv |
4.共通教育機構A棟2Fの端末スペース
多くの学生がメールやWWWブラウザを日常的に利用するようになり、新着メールだけをチェックしたり、Webでちょっとした検索をするといった短時間の利用に対する需要が増えている。センターの教室は慢性的に混雑しているので、こういった需要に対応するために、いわゆる「情報キオスク」と呼ばれるような端末スペースを設置してみることにした。
ちょうど共通教育機構A棟2階には、学生のためのコミュニケーションスペースが確保されていたので、共通教育機構のご理解をいただいて、この一角をパーティションで区切り、21台の利用者計算機(ディスクレスPC)を設置した。
限られたスペースにできる限り多くの利用者計算機を設置したいこと、および、回転を良くして多くの利用者に活用してもらいたいことから、高い机に計算機を設置して椅子なしで立ったまま利用してもらうことにした。なお、車椅子用に1台だけ低い机に設置している。
なお、コミュニケーションスペースおよび豊中教育実習棟第4教室のディスクレス
PC は、画面の解像度(画面に表示できる点の個数)が1024 x 768 ピクセルである。IntelliStation
に比べて画面に表示できる情報量がやや少ないので、画面設定を工夫する必要がある。詳しくは、センターのWebページのFAQ(\verb!http://webserver/FAQ/!)を参照されたい。
5.旧システムからの移行
2月から5月までの仮運用
システム更新の作業計画をたてるにあたっての問題点として、就職活動に支障を与えないように配慮する必要があった。最近では就職活動においてWWWブラウザやメールが必須になってきており、個人でインターネット接続環境を持たない学生にとっては、機種更新作業中に不利益を被るおそれもあるからである。センターでは、(株)ソニーファイナンスインターナショナルから旧システムの寄附を受けて、システムの入れ替え作業中も旧システムの一部のサービスを実施することにした。新システムの設置作業に支障のない場所ということで、関係各方面のご協力をいただき、豊中地区ではデータステーション2階、吹田地区では生命科学図書館に設置スペースをいただいた。合計27台の利用者計算機
を設置して、2月1日から5月31日まで学生へのサービスを継続した。なお、4月以降も5月末まで利用可能としたのは、旧システムのファイルを新システムへ 移行する作業を学生個人の責任で実施させるためである。
旧メールアドレスの利用
組織が情報処理教育センターからサイバーメディアセンターに変わったことに伴い、新システムでのメールアドレスのドメイン名を@ecs.cmc.osaka-u.ac.jp!
に変更した。ログイン名は旧システムから継
続しているので、旧システムのアドレス(xxxxxx@ex.ecip.osaka-u.ac.jp!)宛のメールを、そのまま新システムで受け取れるように設定している。このメールアドレスの自動読み替えサービスは、2000年12月末までの予定である。
6.利用環境
新システムになって利用形態は大きく変った。前回のシステム更新では、同じOSを継続したので基本的な操作は変わらなかったが、今回のシステム更新では、たとえばファイルをコピーするというような基本的な操作も少し変わる。ここでは、利用にあたっての主な留意点を述べる。
6.1個人ファイル領域
個人用のファイル領域が10MBから20MBに拡張された。また、すべてのIntelliStationにZIPドライブを装備したので、ファイルのバックアップあるいは自宅へのデータの持ち運びにZIPを使うことができる。ZIP媒体の容量は1枚あたり100MBなので、個人のファイル領域のバックアップには1枚のZIP媒体
で可能である。また、教室のIntelliStationの何台かには、MOドライブを装備してあるのでこれも利用できる。自宅のパソコンにZIPドライブもMOドライブもない場合には、従来どおりフロッピーディスク(1.44MB)を利用する必要がある。
6.2メールの扱い
メールシステムでIMAPを使うように変更した。従来は、新着メールを蓄えておく場所(メールスプール)として一人あたり1MBの領域を利用できたが、最近では図形データなど大きなデータが添付されたメールを受け取る場合も多く、そのようなメールを一つ受け取っただけでメールスプールがあふれ、新着メールが受け取れなくなる場合があった。
新システムでは、メールスプールを5MBまで利用可能である。しかし、IMAPでは、新着メールだけでなく受け取ったメールすべてをメールスプールに保存するので、利用者はメールスプールがあふれる前に、メールを削除したり、個人用のファイル領域(あるいはZIPなどの外部記憶媒体)へのメールを移動する必要がある。なお、新システムでのメールスプールはNetscape Messenger上では``Inbox'' と表示されている。
6.3現在の問題点
現状では、システムのサーバ系がNFSやNISが高負荷となり、利用者計算機でのレスポンスが悪くなる問題が発生している。また、利用者計算機の基本ソフトウェア(Linux)あるいはアプリケーションプログラムで、日本語への対応が十分にできていないなどの問題があり、まだすべてが解決されたわけではない。さらに、Linuxカーネルに重大なセキュリティホールが見つかるなど、Linux自体も発展途上の感もある。
センターでは、各種のノウハウや不具合への対処方法について、随時Webページ(http://webserver/!)で公開しているので、「新着情報」と「よく寄せられる質問(FAQ)」はできるだけ最新のものを読んでいただきたい。
7.おわりに
新システムは2000年3月1日よりレンタル契約を開始し、4月10日より一般学生へのサービスを開始した。オープン早々から、電子メールおよびWWWブラウザの利用頻度が高く、授業を通じてその他のアプリケーションも利用されるようになった。5月過ぎには旧システム時代と同様に、空き計算機を待つ行列が見られるようになった。
9月には新築の附属図書館本館がオープンする予定である。図書館本館のB棟4Fの分散端末室に設置した79台の利用者計算機も利用可能となり、豊中教育実習棟の混雑が緩和されることを期待している。また、附属図書館は日曜日も開館されるので、日曜日にも分散端末室も利用できるように検討中である。
また、前システムでのNEXTSTEPは8年間利用されてきたので、今回の機種更新によって教官および2年生以上の利用者にとっては、計算機の利用環境が一新されたことになる。今年度入学生の多くは1年次に情報活用基礎などの授業により、当初から新しい計算機環境によるリテラシ教育を受けることができる。センターとしては、教官および2年生以上の学生に対し、新しい計算機環境になじんでもらうように努力する必要があろう。
新システムの利用者計算機に採用しているLinuxは、オープンソースソフトウェアであり、Linuxで動作する各種アプリケーションも数多く開発されている。授業で特定のアプリケーションを利用したい、または、新たに教育用計算機システムを授業に利用したいと考えておられる教官の方は、情報メディア教育研究部門までご相談いただきたい。現在残されている問題をひとつひとつ着実に解決し、よりよい環境を提供するよう努力していくので、皆様方のご協力・ご支援を賜れば幸いである。