各研究部門の紹介と抱負

応用情報システム研究部門


 当研究部門は旧大型計算機センターからの振替講座であり、その意味では最も古くからこのセンターにかかわっていることになる。私が着任したころの大型計算機センターは(もう10数年前であるが)、ちょうどワークステーションが流行りだしたころであり、大型計算機とはこれからなくなっていくだろう存在であって、センターのたそがれが始まろうかというころであった。しかし、その後、ODINSというキャンパスネットワーク、ORIONSという地域ネットワークが開始され、その運用管理がセンターの大きな役割になった。また、一方で、スーパーコンピュータを用いた超大規模計算科学が花開いた。その都度、センターは役割を少しづつ変えながら現在にいたっている。その間に利用者のコンピュータに持つイメージは「だましだましながらでも何とか動かして結果を出す」というものから、「動いてあたりまえ、簡単に使えなきゃやだ」というものに変わってきた。それとともに、センターの業務はより高度なもの、多様なものが求められ、増える一方であった。
 にもかかわらず計算機関係、情報関連にかけられる予算はあまり増えていない。たしかに、ODINSなど機器にかかる予算は多少増大したが、あれも補正予算であって継続的な投資ではない。センターにおける計算機のレンタル費は決して増えていない。さらに、サービスの多様化が要求されているのに、くるのは物ばっかりであってそのサービスを行う肝心の人員は増えていない。したがって、ここにもセンター業務の増大の一因がある。
 一方で民間企業においては、情報サービス、情報戦略の重要視が認識され、情報関連投資が行われている。その中で、MIS、ERP、SAPといった情報サービスの根幹を担うアプリケーションがパッケージ化され、アウトソーシングという形で情報サービスを外から買うということが行われ、効率化が図られている。ところが、大学においてはいまだ情報サービスに対する投資といった概念や予算もなく、学生や助手がまさに「ボランティア」でこれらのサービスを行わざるを得ない。社会人の方が、研究者として大学にこられることが多くなったが、「大学では研究をするためにまずパソコンやネットワークの設定からはじめないといけない、大変ですね」といわれる。情報戦略やそれに基づく投資を行っていない大学が今後の競争環境を生き残っていけるはずがないと思うのである。
 そこで、である。サイバーメディアセンターはこれまで情報サービスの根幹を担ってきた部門が集約することにより、今後行われるであろう情報投資を一元化し、情報戦略を打ち出し、スムーズに実行に移すべく組織されたものであろうと思っている。諸先生方の努力によりこの意図が達成されるべく活動を開始しており、たとえば本学における不正アクセスについての総合的な対策を立案し、実行していく中で当センターが中心的な役割を果たしつつある。しかし、それとともに情報関連サービスに関して「ものよりサービス」という大転換を制度・予算面から図っていく必要がある。
 もうひとつ、旧大型計算機センターを見てきたものとして、気になることがある。「汎用機」はどこに行くのかということである。もちろん、実際にセンターがいわゆる「汎用機」のサービスを止めて久しい。「汎用機」の目指したサービスはスーパーコンピュータのように大規模な計算ではないが、計算機をつかって何らかの情報処理がしたいというものである。名前のとおり広く一般的なサービスを提供するのが使命である。その役割の多くはワークステーション、パーソナルコンピュータに引き継がれていった。コンピュータは共有して使うものではなく、個人で使うものになった。それにともない共有して使うコンピュータの役割は終わり、大型計算機センターはスーパーコンピュータへとシフトしていった。
 しかし、企業などではいま分散コンピューティングへの反省が始まっている。ASP (Application Service Provider)がそれであり、アプリケーションそのものを集中してネットワークを通じてサービスしようというものである。アプリケーションの分散投資による維持コストの増大に対処するために登場したサービスである。集中して管理することにより維持コストを下げ、全体での統一したサービス向上を図ろうというものである。これが大学にそのまま当てはまるかどうかはわからないが、同じ問題を抱えているのは確かである。その際、大学が求める普遍的な情報サービスとは何であろうか。大学の「教育・研究」という目的のための普遍的なサービス、それが「電子図書館」の目指すものと同じだろうと考えている。
 応用情報システム部門は端的には、大学における「電子図書館」を推進する研究部門である。しかし、ここでは電子図書館を蒸気のような広い意味で捉え,大学における役に立つ情報サービスとして提供することを目指している。「汎用機システム」の更新を来年度に控え、いったいどんなシステムを入れようかと頭を悩ませる今日この頃である。ぜひ、皆様のお知恵を拝借したい。