各研究部門の紹介と抱負

サイバーコミュニティ研究部門


本研究部門は、SCS遠隔教育の企画と運用、社会との連携による先端技術に関わる遠隔研修の企画と運用、サイバーコミュニティ計画推進に関わる企画と運用等に関する教育研究を行う部門としての活動を予定している。
SCSは、Space Collaboration System の略で、通信衛星を利用して大学間を結ぶ先進的な情報通信ネットワークの名称である。わが国の高等教育を、来るべきマルチメディア社会に対応できるように整備して行く計画の一環として設置されることになり、平成8年10月から試験運用が開始され、さらにその結果を踏まえ、平成9年4月からは本格運用がはじめられている。
このシステムの端末が設置された講義室をVSAT(Very Small Aperture Terminal)局と呼ぶが、VSAT局間では互いに映像や音声を双方向にリアルタイムで交換できるので、複数のそうした局どうしを結んで講義や研究会、会議等を行うといった使い方が可能である。
筆者らは、平成8年度第2学期以降、SCSを利用して、北海道大学、東京大学、大阪大学を相互に接続し、阪大と北大の学生を対象に一般図形科学を内容とする講義を実施して来ている。こうした経験をふまえ、SCSや高速LANを特性に従って組み合わせて使用した遠隔教育および遠隔研修システムのモデルを今後構築拡張し、サイバーコミュニティ計画推進の核として行く予定である。
この他、住宅のように設計条件が複雑で、多様な要求を満たす必要のある建物の間取りを、直方体分割図であるとみなすことにより、電算機上で容易に取り扱えることを明らかにし、直方体分割図のすべての形をつくり出すとともに、設計条件を満足させる間取りがありうるかどうかを判定する方法を求め、直方体分割図の概念が、建築設定上有用であることを示して行く「直方体分割図の建築設計への適用性」や、建物の間取りを定める建築平面計画を、与えられた設計条件のもとで、建築コストが最小となるように、階高および各室の間口や奥行きの寸法を決定することであるとみなし、各室に割り付けられる寸法および床面積、窓や戸、階段を設けるのに必要な寸法、各室相互間のつながり方、各室の壁、床、天井それぞれ1平方メートルあたりの施工コストなどの設計条件が与えられれば、非凸型非線形計画法の解として最適な間取り図を得る「建築平面計画の最適化」、舞台の書割りのように厚みがなく薄っぺらに見える場合が多いと考えられているアナグリフなど2眼式の立体視に透視投象の原理を適用し、両視点と画面の位置を正確にコントロールすることであたかも対象が元通りに存在するかのような、ふっくらとした立体感と実物大のスケール感をもつ融合像が得られる立体視画像がつくり出す「仮想視環境の構成に関する図学的解析」、および地理情報システムを移動体計算環境においてインタラクティブに使用することを目指した「移動体計算環境におけるアクティブデータベースの実装」等の研究を予定している。
いずれも情報処理技術と社会生活の接点に成立する研究であり、本研究部門の究極テーマであるサイバーコミュニティ計画推進を支えて行くものと期待している。