研究部門の業績

応用情報システム研究部門
Applied Information Systems Division


1.部門スタッフ

教授 下條 真司
略歴:1981年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1983年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1986年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程修了。1986年4月大阪大学基礎工学部助手、1989年2月大阪大学大型計算機センター講師、1991年4月大阪大学大型計算機センター助教授、1998年4月大阪大学大型計算機センター教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門教授。情報処理学会、電子情報通信学会、ACM、IEEE、ソフトウェア科学会各会員。

助教授 馬場 健一
略歴:1990年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1992年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、1992年9月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士後期課程退学。1992年10月大阪大学情報処理教育センター助手、1997年4月高知工科大学工学部電子・光システム工学科講師、1998年12月大阪大学大型計算機センター助教授、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助教授。1995年3月大阪大学博士(工学)取得。電子情報通信学会会員。

講師 野川 裕記
略歴:1990年3月大阪大学医学部医学科卒業。1990年7月大阪大学医学部附属病院研修医、1991年7月国立呉病院研修医。1997年3月大阪大学大学院医学研究科博士課程内科専攻修了。1997年4月札幌医科大学医学部助手。1999年6月札幌医科大学医学部講師、2000年8月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師。IEEE、電子情報通信学会各会員。

講師 春本 要
略歴:1992年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、1994年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野博士前期課程修了。1994年4月大阪大学工学部情報システム工学科助手、1999年11月大阪大学大型計算機センター講師、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門講師となり、現在に至る。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会各会員。

助手 東田 学
略歴:1989年3月東京工業大学理学部数学科卒業、1991年3月東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻修士課程修了、1997年3月大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。1994年4月大阪大学大型計算機センター助手、2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。

助手 秋山 豊和
略歴:1997年3月大阪大学工学部情報システム工学科卒業、1999年3月大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了、2000年3月大阪大学大学院工学研究科博士後期課程退学。2000年4月より大阪大学サイバーメディアセンター応用情報システム研究部門助手。現在に至る。電子情報通信学会、情報処理学会、IEEE各会員。

教務職員 加藤 精一
略歴:1997年3月東京大学工学部計数工学科卒業、1999年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程修了、2002年3月東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了、2002年4月より大阪大学サイバーメディアセンター、応用情報システム部門教務職員。日本天文学会会員。博士(理学)(2002年3月、東京大学)。

2.教育および教育研究支援業績

 本研究部門において事業部門と連携して実施している教育研究支援活動について本年度の成果を報告する。

2.1 スーパーコンピュータシステム

 2001年1月5日より運用を開始したスーパーコンピュータシステムSX-5/128M8は、導入後2年を経過し3年目を迎えた。
 本システムは、Linpackベンチマークにてベクトル型スーパーコンピュータとしては初めてTFLOPSを超える実効性能 (1,192GFLOPS) を達成した画期的なシステムである。しかし、本年、本システムと同様のアーキテクチャを持つ地球シミュレータ (http://www.es.jamstec.go.jp/)が稼働し、Linpackベンチマークにて35.86TFLOPSという米国にとってスプートニクショック以来の技術的屈辱と例えられる程、飛び抜けたベンチマーク性能を達成したことで、絶対性能としては随分見劣りするものとなった (地球シミュレータは、実シミュレーションでも10TFLOPSを越える性能を実現している)。2002年11月付けの“TOP500 Supercomputer List” (http://www.top500.org/) においてもPCクラスタの躍進の煽りを受け、昨年の12位から34位に後退している。
 しかし、利用者の声を聞くと、本システムが提供している機能、特に、128GBの共有メモリ型主記憶と、どのノードからも16本のファイバーチャネルで共有接続された8TBのグローバルファイルシステム (/sxshort) によって、大規模シミュレーションにおいて他のシステムにないユーティリティを提供していると、依然として高い評価を得ている。実際、地球シミュレータで行ったシミュレーション結果を本システムにて解析しているというユーザは少なくない。東北大学情報シナジーセンターに導入された2TFLOPSという論理ピーク性能のSX-7と比べても、大規模データ処理能力という点では競争力を失ってはいない。
 2003年2月現在、/sxshortの利用率は90%近くまで飽和しつつあり、大規模シミュレーションが要求するデータ解析量の膨大さの一端を物語っている。このように、本システムは、稼働開始直後から活発に利用されており、本センター設置分の6ノードの利用率(稼働時のユーザによるプロセッサ利用率) は、昨年同様通年で75%を越えている。運用実績の詳細は、本年報の記事「スーパーコンピュータシステムSX-5/128/M8のフェアシェアスケジューラによる運用(2002年度版)」を参照頂きたい。
 なお、これまで分散型のリソース管理を行ってきた。これは、システム運用ソフトウェアとしては画期的なデータ管理方式である一方で、ノードの負荷が高まった時にリソース管理システムの過負荷によってストールするという障害要因となっていた。来年度は、システムソフトウェアの更新に伴って、外部集中型のコンベンショナルなリソース管理方式への移行を行なう。この詳細に付いても前述別項を参照頂きたい。
 

2.2 汎用コンピュータシステム

 2002年3月25日に汎用コンピュータシステムの更新を行い、本年度よりサービスを開始した。更新システムの機器構成については、2001年度の年報を参照されたい。
 特に、全国共同利用として4個のIntel Itaniumプロセッサを搭載したアプリケーションサーバ(NEC Express5800/1160Xa)を中心としたシステムの提供を開始し、分子化学アプリケーションGaussian98、構造解析アプリケーションMSC.Marcの利用を中心に活用されている。また、大規模計算機システムのセキュリティを向上させるため、システムへのログインをログインサーバに集約するとともにプロトコルをsshに限定し、電子メールの送受信にはSMTP AUTH、APOPに対応するなどの運用方針変更を行った。
 また、汎用コンピュータシステムの一部は教育用計算機システムや電子図書館システムの端末として活用されており、さらにアカウント統合管理システム(別項参照)の導入によって、一つの利用者アカウントで学内の様々なシステムが利用できる環境を整備した。さらに、同じアカウントで利用できるポータルシステムの運用を開始した(別項参照)。

2.3 大阪大学総合情報通信システム

 大阪大学総合情報通信システム(ODINS; Osaka Daigaku Information Network System)は、大阪大学内のキャンパスネットワークの名称であり、サイバーメディアセンターがODINS事務室とともに、設計、管理、運用を行っている。
 ODINSは、1994年の第1期整備、1996年の第2期整備、1998年の第3期整備を経て、ATMスイッチをバックボーンとするネットワークを構築し、2000年の時点で16000台以上の端末が接続されている。さらに、2001年度には第4期整備を行い、ギガビットスイッチおよび高速ルータをバックボーンとするネットワークを構築した。すでに、多くの部局においてATMバックボーンからODINS第4期のギガビットバックボーンへの移行を完了している。
 近年、ネットワークにおけるインシデント(コンピュータセキュリティに関係する人為的事象で、意図的および偶発的なもの)が増加しており、大学においても組織的な対応を迫られている。このような状況の中において、大学においても、情報セキュリティポリシーを策定し、セキュリティポリシーに基づいたネットワーク運用を行う必要性が高まっている。
 大学における情報セキュリティポリシーの策定を促すために、国立情報学研究所を中心に「大学の情報セキュリティポリシーに関する研究会」が発足し、2002年4月18日には「 大学における情報セキュリティポリシーの考え方」を発表している。
 これに基づいて大阪大学においても、ODINS運用管理部で「ODINS運用原則とセグメント分けポリシー」を策定した。この「ODINS運用原則とセグメント分けポリシー」はODINS運用委員会で承認され、すでに実務に供せられている。
 このセグメント分けポリシーに基づき、学内の計算機をセキュリティレベルの異なるセグメントに分割し、それぞれのセグメントに対して、高速ルータへのパケットフィルタリング設定を行い始めている。
 なお、2003年1月25日に世界的に大流行したSlammer Wormについて、大阪大学では既にセグメント分けポリシーにおいて該当ポートを通信不可としており、しかもすでに全学的なフィルターを設定していた。そのため、大阪大学においてはSlammer Wormによる被害は報告されていない。
 また、ODINS第4期整備において、ODINSのセキュリティ対策の一環としてウイルスチェッカーを導入していたが、今年度よりウイルスチェッカーの運用を本格的に始め、すでに複数の部局に対してメールのウイルスチェックを行っている。今後、ウイルスチェックを行う部局を拡大し、最終的には、ODINSから出るあるいはODINSに入ってくるすべてのメールに対してウイルスチェックを行う体制を目指している。
 以上のように、今年度は、ODINSのセキュリティ向上に向けての体制を整え始める最初の年となった。また、科学技術振興調整費による「セキュア・ネットワーク人材育成プログラム」を通じた管理運営要員の育成、社会への技術移転を行っている(後述)。

2.4 バイオグリッド基盤システム

 サイバーメディアセンターでは、バイオグリッド基盤システムを2002年3月に整備した。一般的に、演算性能を追求する計算グリッド・システムでは、同一構成のコンピュータを多数ネットワーク接続するホモジニアスな構成をとる。本システムは、バイオインフォマティックスに必要とされる計算グリッドの機能要件の多様性に答えるために、それぞれに適した特性を持つ中小規模の計算グリッドを混成したヘテロジニアスな4システムによって構成される。グリッド・システム(写真1)は、クラスタ用の専用ネットワークインターフェイスMyrinetによって高速かつ低遅延に密結合した典型的な計算グリッド・システムである。
 グリッド・システム(写真2)は、複数のFastEthernetによって多点結合したクラスタ・システムであり、柔軟なサブシステムへの分割や、トランキング結合による高帯域データ交換が可能である。
 また、各システムが160GBのローカル・ストレージを有し、システム全体では12TBもの容量を提供する。この構成は、バイオインフォマティクスに要求される大規模データの分散解析に適したものである。
 グリッド・システム(写真3)は、古典的な共有メモリ型サーバ・システムである。大規模データベース検索において汎用性能を提供する。
 グリッド・システム(写真4)は、クラスタ型ファイルサーバであり、トータル15TBのネットワーク・ストレージを提供する。
写真 1 グリッド・システム1 写真 2 グリッド・システム2
写真 3 グリッド・システム3 写真 4 グリッド・システム4

 これらのシステムはSCoreやGlobusなどのグリッド基盤ソフトウェアによって運用され、本センターのスーパーコンピュータシステムやデータグリッドシステム(後述)、各拠点の計算グリッド・システムなどとともにグローバルなグリッド・システムの一角を構成する。
 

2.5 データグリッドシステム

 グリッドコンピューティング技術の研究・開発の進展に伴い、組織間でグリッドコンピューティングのためのテストベッド構築が進められており、テストベッド環境を用いた共同研究が急速に立ち上がりつつある。本研究部門においてもバイオグリッド基盤システムの項で述べられているように,海外の組織も含めた共同研究を進めている。その中でMEGを用いた脳機能解析や超高圧電子顕微鏡による観測試料の構造解析など高性能なセンサ群から取得したデータやグリッドコンピューティングによるシミュレーション結果などを可視化し、解析する機能が求められている。また、組織間で研究データの共有、検索を可能にすることで、さらなる高次解析機能を実現していく必要がある。
 これらの要望に応えるため、2003年1月7日にデータグリッドシステムを導入した。データグリッドシステムの概要を図2に示す。データの表示用装置として、4面スクリーンとシャッターつきメガネで立体視を実現するCAVEシステム、ユーザ間で視点を共有しつつ立体視を可能にするイリュージョンホール、ドーム型のスクリーンを用いて立体視を行うCyberDomeを導入した。これらの表示装置を用いて3次元データを観測することで、平面ディスプレイを用いた場合に比べて構造把握が容易になる。実験データの解析だけでなく、Virtual Reality技術の研究開発や教育用コンテンツの開発にも利用できる。
 表示用装置に3次元映像を生成するための計算機としてOnyx300を導入した。Onyx300には遠隔地の端末に3次元映像を表示する機能も備わっているため、遠隔組織間の共同研究にも利用可能である。また、大容量のストレージを搭載しており、シミュレーション結果や観測結果の蓄積も可能となっている。
 さらに共同研究を行っている超高圧電子顕微鏡センターに高精細冷却CCDカメラおよび制御用PCによる撮影装置を導入した。この撮影装置の導入により、これまでフィルムで撮影して郵送していた試料画像をネットワークを経由して直接利用者に届けることが可能となり、バイオやナノ分野の研究者による利用を促進できるものと考えられる。
 今後はグリッド技術を用いたデータ共有のための基盤ソフトウェアを導入し、組織間での共同研究を推進するための基盤技術の研究開発に取り組む必要がある。超高圧電子顕微鏡の遠隔利用システムなど、さまざまな研究分野のシステムとの連携運用について今後検討していく必要がある。


2.6 アカウント統合管理システムの開発

 サイバーメディアセンターでは、学内の(公共)施設内外に設置された情報システムを利用するための統合アカウントの導入を計画している。統合アカウントの導入によって、例えば、附属図書館内に設置されたマルチメディア端末、情報コンセント、あるいはサイバーメディアセンター内に設置された各種システムがひとつのログイン名とパスワードの組み合わせで利用することが可能になる。この度、このようなコンセプトのもと、まずはサイバーメディアセンターが提供する情報システムにおいて利用できるアカウント統合管理システムを開発し、2002年3月に導入、運用を開始した。
 アカウント統合管理システムは、ユーザ情報を格納するサーバと認証を受けるそれぞれの情報システムの認証サーバ(アカウント統合管理システムにおけるクライアント)、および管理端末からなる。認証の対象となる情報システムとしては、現在、教育用計算機システム(情報教育システムとCALLシステム)、電子図書館システムのマルチメディア端末と情報コンセント、豊中教育研究棟情報コンセントがある。これらのアカウント統合管理システムのサーバ、クライアント、管理端末は独立したセキュアなネットワークで接続され、認証情報はさらに暗号化された上で伝送される。アカウント作成に必要なユーザの情報は、総務部、学生部の協力、連携により入手し、全教職員、全学生のアカウントを作成している(ただし、一部事務局で十分な情報を持たない人については申請により作成する)。ユーザのパスワード変更は、CMCアカデミックポータル等を経由して行うことにより、サーバ上のデータベースを更新し、それらを各クライアント(各情報システムの認証サーバ)へ配信する。従って、それぞれ異なるシステムを利用する場合にも、同一のログイン名、パスワードであらゆる情報システムが利用可能となる。
 現在、サイバーメディアセンター以外の一部の組織、システムでも統合アカウントを利用した運用を実施しているが(例えば、教官基礎データ収集システム)、セキュアな環境の構築方法や情報管理手法について課題が多い。今後は、すでにいくつか要望が来ているが、他の組織が運用するシステムに対しても認証サービスが提供できるかを検討していく。


2.7 ポータルシステム

 全国の大学に先駆け、Web上での情報活用を促進するポータルシステム「CMC Academic Portal」の運用を開始し、学内の全教職員および全学生、ならびに、全国共同利用の大規模計算機システムの利用者への提供を2002年4月より開始した。本システムは、近年企業等での導入が進んでいるEIP (Enterprise Information Portal)の概念を大学に適用したものである。特に、利用者の身分によって表示する内容を変える、利用者自身が変更できないシステムページを設けるなど、大学向けのカスタマイズがなされている。
 運用開始当初は提供するコンテンツがあまり整備されていなかったものの、2002年6月には大規模計算機システムの利用者向けに課金情報の提供を開始し、引き続き7月には学生向けにプリンタ印刷枚数の表示機能の提供、9月には大阪大学からの新着情報の提供、10月にはサイバーメディアセンターが提供しているマルチメディア型英語学習システムNetAcademyへのシングルサインオン機能の提供およびオンライン利用申請機能の提供、11月には全学規模で行われた教官基礎データ収集における入力システムへのシングルサインオン機能の提供など、着実にその提供機能を拡充してきた。また、附属図書館とも協力し、各種データベース検索システム利用のための認証にもポータルシステムを活用するなど、別項のアカウント統合管理システムの導入と合わせ、全学の情報活用環境の向上ならびに事務の効率化に貢献している。
 今後の計画として、さらなる機能拡充のために、学内の各種情報システムとの協調運用がある。特に学務情報システムやオンライン学習支援環境(WebCT)と連携することは、学生や教官に対するサービスとして非常に大きな可能性をもっており、その実現に向けて関連部門との連携を図りながら、システム企画を行っていく予定である。

2.8 SecureNetプログラム

 サイバーメディアセンターでは、IT社会の高度化・複雑化が進む中で、人材不足が深刻化するネットワークセキュリティ専門技術者を養成するため、2001年度より、文部科学省科学技術振興調整費(新興分野人材養成)の助成を受け、「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成プログラム(SecureNetプログラム)」を立ち上げた。最先端の技術を反映した実践中心のカリキュラムと専門的な知識を十分に備えたスタッフをそろえ、大学院生、社会人を中心にネットワークセキュリティ専門技術者の育成を行っている。本プログラムにおいては、年間10人程度、本プログラムの継続期間5年間で50人程度の専門家を育成することを目標としている。
 具体的には、カリキュラムは、半期ずつの基礎コース、応用コースから構成される。それぞれのコースでは、セキュリティ技術、セキュリティマネジメント、法制度の3つのテーマを、講義と実験を組み合わせて週1日のペースで実施している。さらに、それぞれのテーマごとに外部講師を迎えての特別講義も併せて実施している。第1期の基礎コース、応用コースを通して目標を上回る15名程度の人材を育成し、これらの修了者は学内で社会でその成果を発揮している。
 また、情報科学研究科と連携し、研究科の正式なカリキュラムである演習において、本プログラムの一部であるネットワークセキュリティに関するテーマを与え、教育している。さらに、大阪大学社会人教育講座と題した社会人セミナーにネットワークセキュリティに関するテーマを拠出し、実施に協力している。詳しくは「センター報告」の記事を参照のこと。

2.9 教育活動

 本部門は情報科学研究科マルチメディア工学専攻、および工学部情報システム工学科目にて応用メディア工学講座を兼任しており、学部、大学院の学生の研究指導を行うとともに、下記の講義を担当した。

3.研究概要

3.1 グリッド基盤技術の開発と応用

 グリッドは科学技術の発展に必要不可欠であるとして、多くの研究者や科学者らの期待を高めている。また、今日ではグリッドのビジネスへの応用への期待も急速に高まりつつあり、われわれの日常生活においてもグリッドという言葉を目にすることが多くなってきた。
 本研究部門では、今日のグリッドへの期待や需要の高まりをグリッド技術の開発黎明期の早くから予測し、1990年代半ばよりグリッド技術の研究開発を推進してきている。本年度の主な研究課題は以下のとおり。
 
3.1.1 セキュアグリッドファイルシステム

 グリッドは、インターネット上に動的に形成される計算環境である。公共ネットワークというネットワーク環境上で形成されるグリッド環境において、医療・軍事情報などの機密性を要するデータの共有・交換を実現することは非常に困難であり、今後われわれITの研究者らが解決していかなければならない多くの課題が残されているのが現状である。
 センター報告で述べたように、本センターでは、文部科学省のITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」という課題のもと、バイオグリッドプロジェクトに本年度より着手している。本プロジェクトには、本学たんぱく質研究所、大学院情報科学研究科といった学内研究機関および神戸大学や関西の主要な製薬会社などの学外研究機関が参画しており、将来的にはそれらの研究機関間で製薬データ、医療データなどの機密性の高いデータを安全に交換、共有できる研究基盤が本プロジェクトの成果として求められている。
 本研究課題であるセキュアグリッドファイルシステムの研究開発は、上記のような観点から推進されるものである。本研究開発は、実際のエンドユーザとなるバイオの研究者ら声を最大限に反映し、真に有用なセキュアグリッド環境を実現すべく、実証ベースで行われている点を最大の特徴とする。セキュアグリッド研究開発初年度となる本年度は、ユーザの需要に基づき、セキュアグリッドファイルシステムのプロトタイプ構築を行っている。本システムの実現により、公共ネットワーク上での機密データを扱うことが可能となり、グリッドを通じた多組織間での共同研究が飛躍的に促進されることが期待される。
 
3.1.2 MEGridポータルシステムの研究開発

 グリッド技術は成熟しつつあり、標準化へ向けて日々研究開発が世界各国で行われている。しかし、グリッドは先にも述べたが、1990年代半ばに誕生した技術であり、いまだ研究開発の余地が多く残されている。そのような研究開発の余地が残されている領域として、ユーザ利便性を考慮したグリッドポータルシステム構築技術が上げられる。グリッドポータル技術とは、グリッドの提供する機能をウエブインタフェースで提供する技術である。今日のグリッドは多くの要素技術から構成されており、またそのシナジーがグリッドを現実のものとしている。しかし、このシナジーを最大限に活用し、ビジネス、科学問題へエンドユーザである科学者や研究者らがグリッドを応用することは非常に困難であるという現実がある。その主な理由として、グリッドの利用は、グリッドの提供するメカニズムを熟知していることが前提とされていることにある。
 本研究課題は、グリッドの複雑なメカニズムをITに関する深い知識を持たないエンドユーザから隠蔽し、エンドユーザがグリッドの提供するシナジーを容易に活用できる研究基盤を提供することを最大の目的とする。その目的のために、これまで本部門で研究開発を行ってきた脳磁計(Magnetoencephalography; MEG)データを用いた脳機能解析のためのグリッドポータル環境の構築を本年度は主要課題とし、研究開発を推進している。これにより、脳機能解析に携わる研究者らが潜在的にもつグリッドへの要求を引き出し、その要求をみたすことのできるポータル環境を実現し、脳科学の進展にIT分野から貢献したいとわれわれは考えている。

3.1.3 v6-ready Grid

 グリッドはインターネット上に存在するすべてのエンティティを対等な計算資源であると定義し、またそれらに対して統一的なアクセス手法を提供する。近年のグローバルコンピューティング時代への急速な移行を鑑みれば、現在の32ビットで構成されるインターネットアドレス空間では対応しきれないことは容易に想像できる。また、グリッドのビジネスへの応用が期待されつつある今日においては、現在インターネットアドレス空間を拡張する手段として用いられているNAT (Network Adddress Translation)ではデータ交換の送受信計算機間での認証というセキュリティに対する要請にこたえることはできないのが現実である。(NATを用いた場合、実際にデータをやりとりするピア間(計算機間)に仲介するピアが存在してしまうため、セキュリティレベル低減のリスクが存在する。)
 上記のようなことを考慮すれば、最新インターネットプロトコルIPv6の導入は急務である。本研究課題では、上述のような観点からグリッドの標準実装である最新版Globus grid toolkitをIPv6化し、21世紀のグローバルコンピューティング時代へいち早く対応することを目的としている。

3.1.4 MEGを用いた脳機能解析のための医用インフラストラクチャの構築

 高齢化社会への移行に伴い高度な医療サービスの需要が増加傾向にあり、医療費も増加傾向にある。高齢者に多い致命的な疾患として痴呆や脳血管障害などの脳疾患があげられる。また、異常犯罪を犯す若年者の脳機能発達異常が指摘されている。現代社会において、脳機能異常の早期発見、早期治療は非常に重要な問題の一つである。
 本研究では、グリッド技術を用いることで、計算機および高度先進医療機器資源の共有、データの高速伝送、解析の高速化、診断の能率化を計り、低コストで効率の良い医療を行うことを目的としている。また、上述の3つのグリッド基盤技術を用いて、脳機能解析のために有用な研究基盤を実際に構築し、脳科学に貢献することを最大の目的とする。

3.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャに関する技術

3.2.1 アクティブネットワーク技術等を用いたサービス運用管理技術の研究開発

 次世代ネットワークの課題とされる、ユーザの要求に応じたネットワーク品質を提供するサービス機構、および、それらに対応したサービス運用管理技術について、異なるドメイン間での連携や、トラヒック需要や網状態に応じた帯域・経路選択、高信頼性などの観点からの実用性と総合性を重視した研究開発を進めている。

3.2.2 IPネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発(優先帯域制御技術)

 DSLやケーブルインターネット等によるアクセス回線のブロードバンド化や、IPネットワーク関連機器の高機能化・低廉化等によって、VoIPやIP-VPNサービスなどが普及しつつある。このようなIPネットワークの急速な普及に合わせて、現行のPSTNがライフラインとして提供している緊急通報・重要通信の確保等と同等の機能をIPネットワーク上でも実現するための研究が必要とされている。 VoIPでの110番、119番や警察や消防向けのVPNサービス等、品質確保が必要な通信を実現するために必要なインターネットにおける優先制御、帯域制御技術および、それを制御するためのポリシーサーバについて研究を実施している。

3.2.3 Diffserv AF PHBにおける他通信との相互影響を考慮した帯域管理方式

 ストリームアプリケーションの普及に伴い、それらが発生する通信(以下、ストリームフロー)がIP ネットワーク上のトラヒックの多くを占める状況が今後想定される。UDP により通信されるストリームフローと、それ以外の一般的なTCP アプリケーション(以下、非ストリームフロー)のトラヒックが集約された場合、TCP とUDP の振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となるため、これを緩和する新しい方式が必要となる。非ストリームフローは、その上位のアプリケーションにより、要求するQoS、トラヒックの統計的性質等に違いがあるため、それらを分類することにより、ストリームフローとの相互影響についても差異を生むことができると考えられる。そこで、非ストリームフローとストリームフローが混在するネットワークにおいて、それらの相互影響を考慮したトラヒックの収容方式を考える。

3.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的な活用技術

 マルチメディア・コンテンツの有効活用は、情報システムの根幹をなすものである。特に、Webコンテンツに代表されるマルチメディア・コンテンツの効果的な配信技術は、一般ユーザの利便性向上の観点から重要な研究課題である。本研究テーマでは、Webコンテンツを高速に配信するためのキャッシングプロキシの構築技術や、Webコンテンツを利用者ごとに個人化して配信、提示するための技術に関して研究を推進している。
 また、モバイルコンピューティング環境が浸透してくると、情報活用のあり方も変化してくることが予想される。情報量の増大やユーザ数の増加に対応できる新しいシステムプラットフォームが要求されており、その構築手法に関しても研究を進めている。
 

3.4 ネットワークセキュリティ技術

3.4.1 構造解釈に基づいた攻撃プログラムの検知

 最近のインターネットにおいては、CodeRedやNimdaなどの非常に感染力の強いワームが発生し、大きな社会的な問題となっている。これらのワームは、サーバプログラムに存在する脆弱性を攻撃し、サーバプロセスの権限を奪取することで、サーバに感染する。このような攻撃は、シェルコードと呼ばれる小さなプログラムをサーバプログラムに注入することにより行われる。
 サーバプロセスの権限を奪取するという動作は通常のプログラムではありえない動作であり、この動作を行うために、シェルコードは、通常のプログラムではありえない構造を持っている。このような構造は、セキュリティ研究者・開発者の中では暗黙の知識として共有されてきたものであるが、本研究では、この知識を明確化し、攻撃プログラムの検出に利用することを目指している。すなわち、本研究は、シェルコードの持つ本質的な構造を明確化することで、あるプログラムがシェルコードか否かを判定するプログラムを作成し、インターネットセキュリティの向上に寄与することを目指している。
 なお、この研究は、2002年度大学等発ベンチャー創出支援“構造解釈に基づいたセキュリティプログラムの開発”の支援の下に行っており、知的財産権保護の立場から、学会発表より特許申請および製品開発を優先している。

3.4.2 ネットワーク防御の技術

 インターネットが社会基盤となるにつれ、従来の開放的な研究環境の視点に加え、現実社会のさまざまなリスクを考慮しセキュリティを強化したネットワーク環境を実現するための技術が求められている。特に、大規模な不正情報の送信によるDoS(サービス拒否)攻撃や、動作しているプログラムの弱点を攻撃してシステム特権を得ようとする行為などが、現在後を立たない。これらの問題を解決することが、今後安定した社会基盤と呼ぶに耐え得るネットワーク環境を実現する上では必要である。本研究テーマでは、この目標を達成するための要素研究項目として、DNS(ドメイン名システム)の信頼性向上と、侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験による応用手法の開発の2点について研究を推進している。

3.5 フォトニックネットワークアーキテクチャに関する技術

 近年の光伝送技術の発展には目覚しいものがあり、波長分割多重技術や光時分割多重技術などに、よってネットワークの回線容量は爆発的に増大してきた。しかし、光伝送技術とネットワーキング技術はおのおの別個の歴史を持ち、インターネットに適した光通信技術の適用形態については明らかになっていないのが現状である。短期的には、WDM技術を用いた高性能光パスネットワークがその中心技術になると考えられ、その点に着目した研究がおこなわれているが、さらに長期的な解としては、フォトニックネットワーク独自の通信技術も十分に考えられる。たとえば、フォトニックパケットスイッチングやより高度な通信チャネルとしての利用が考えられる。これらの点を鑑みて、それぞれの研究テーマに取り組んでいる。

3.6 超高圧電子顕微鏡の遠隔操作システムの構築技術

 大阪大学超高圧電子顕微鏡センターでは、超高圧電子顕微鏡の利用促進のため、学内の利用者だけでなく遠隔地のバイオやナノ分野の研究者に対しても顕微鏡のサービス提供を行ってきた。旧大型計算機センターのころより本センターと協力して、国際線を用いた電子顕微鏡の遠隔操作などに取り組んできた。しかし、観測結果はフィルムとして郵送するなど、利便性の面からいくつかの課題が残されていた。 
 そこで、このような高性能なセンサから取得されるデータの共有、解析環境をグリッド技術を用いて整備する取り組みを米国のUCSDや台湾のNCHCと協力して進めている。遠隔操作環境を整備することで、高性能なセンサの有効利用が促進できる。

4.2002年度研究業績

4.1 グリッド基盤技術の開発と応用に関する研究

4.1.1 セキュアグリッドファイルシステム

 図4は本年度開発したセキュアグリッドファイルシステムの特徴を示すものである。本年度開発したシステムは、ユーザ利便性を確保したままデータの機密性を保護できる機能を最大の特徴とする。エンドユーザはこのファイルシステムを利用することにより、エンドユーザはそれぞれで独自のツリー構造を持つファイルシステムを実現でき、さらにそれぞれのファイルシステム構造はお互い知ることができない構造となっている。そのため、非常に強い機密性を確保することに成功している。その一方で、グリッドのデファクトスタンダードとなっている認証サービスを活用することにより、安全な認証に基づくファイルシステムを実現するだけでなくシングルサインオンというユーザ利便性を確保することにも成功している。
 本ファイルシステムに興味のある方は、バイオグリッドプロジェクトホームページを参照されたい。まもなく本ファイルシステムの情報が公開される予定である。
図4 セキュアグリッドファイルシステムの特徴

関連発表論文
(1) 武田伸悟,“ユーザ利便性を考慮したセキュアグリッドファイルシステムに関する研究”, 大阪大学工学部特別研究報告, 2003年2月.

(2) Shingo Takeda, Susumu Date, Shinji Shimojo, “A User-oriented Secure Filesystem on the Grid”, The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May, 2003 (TBA).

4.1.2 MEGridポータルシステムの研究開発

 本年度、脳機能解析を支援する研究環境を構築するための1つの課題として、脳磁計(MEG)を用いた脳機能解析のためのグリッドポータルシステムの開発を行った。本システムは、脳機能解析を実施するにあたり必要となる機能を集約した抽象化レイヤ、およびMEGを用いた脳機能解析を実施する際に必要となる機能を集約したMEGデータ解析モジュールという2層構造で設計されている。具体的には、抽象化レイヤにおいては、一般的な脳機能解析において必須となる3プロセス、すなわち脳データ取得、解析、解析結果の解釈に必要となるグリッド機能がサービスとしてまとめられ、上位レイヤのMEGデータ解析モジュールは抽象化レイヤで提供されるサービスを利用し、よりMEGデータ解析に特化した機能を提供している。
 また、本グリッドポータルシステムでは、ユーザとなる研究者や科学者が膨大なデータをより効率的に解析できるように、ユーザの関心領域にあるデータがグリッド環境において優先的に取り扱われるという一種のQoS (Quality of Service)機能を提供している。本機能により、ユーザが早く解析結果を得たいと考える脳機能データに対しては、システムは当該データに対して優先的に解析計算を行うとともに、解析結果をより優先的にユーザに提供する。このようなQoS機能を提供することにより、ユーザは高効率な脳機能解析を行うことができる。
 図5は開発したグリッドポータルシステムを表している。グリッドポータルシステムは、複雑なグリッド環境とユーザ環境のインタフェースとなる部分である。本システムの開発により、ユーザはグリッドの複雑な機能の知識・技術を必要とすることなく、グリッドの提供する膨大な計算力を利用できる。
 今後、われわれはこのポータルシステムを実際の脳機能解析に携わる研究者らに供給することにより、グリッドポータルシステムに対する潜在的な要求をヒアリングし、より脳機能解析に有用なグリッドポータルシステムの構築を行っていくことを考えている。

関連発表論文
(1) 市川昊平, “グリッド技術を用いた脳機能解析及び診断支援ポータルに関する研究”, 大阪大学工学部特別研究報告, 2003年2月.

(2) Kohei Ichikawa, Susumu Date, Yuko Mizuno-Mastumoto, Shinji Shimojo, “A Grid-enabled System for Analysis of Brain Function”, The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May, 2003 (TBA).
図5 MEGrid Portal

4.1.3 v6-ready Grid
 Globus grid toolkitはグリッド環境を構築するためのデファクトスタンダードとなっているツールキットである。本年度は、Globus grid toolkit ver 2.2.3のIPv6化を行った。本年報執筆時点では、Globus grid toolkitのIPv6化はほぼ終了し、現在最終段階にある。興味のある読者の方は、以下のウェブページに適宜情報を掲載していく予定であるので、参照されたい。 (http://www.biogrid.jp/)
関連発表論文
(1) Hongyu Shi, Susumu Date, Yuko Mizuno-Mastumoto, Youki Kadobayashi, ?Shinji Shimojo, “A Secure Grid Environment using IPSec on IPv6 Network”, The 3rd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid 2003), May, 2003 (TBA).

4.1.4 MEGを用いた脳機能解析のための医用インフラストラクチャの構築

 本年度は、産業技術研究所(AIST, 大阪)、サイバーメディアセンター、Nanyang Technology University (NTU, シンガポール)をネットワークでつなぎ、グリッド環境上での高速伝送および高速解析に関する実験を行った。SC2002では、高速脳機能解析に関するデモンストレーションを行った。AISTでMEG(脳磁図)を測定し、リアルタイムに測定データをSC2002の会場であるBaltimoreに伝送し、会場にある命令機のウェブポータルを介して、データはサイバーメディアセンターとNTUに送られ、各々で複数台の計算機を用いてウェーブレット解析を用いた並列演算を行った。解析結果は、即座にBaltimoreに集められ、開発した可視化ソフトにより、脳機能が表示された。可視化ソフトは、分りやすく結果を表示するように工夫されているため、一般医師や患者にも直感的に検査結果を理解することができる。さらに、これらの結果は、AISTの検者に送られ、検査結果は被検者(患者)にその場で伝えられた。
 以上の脳機能解析システムは、膨大な脳機能データを高速に解析するため、患者はこれまで数日もかかっていた脳機能検査をその日のうちに知ることができる。つまり、実用化が可能であることを示した。さらに、脳機能を詳細に調べることを可能にし、脳ドックなどの脳疾患の予防にも用いることができると考えられる。

関連発表論文
(1) 水野(松本)由子,伊達進,甲斐島武.“グリッド技術による医用インフラストラクチャ”,電子情報通信学会論文誌B, Vol. J85-B, No. 8, pp.1261-1268, Aug. 2002.

(2) T. Kaishima, Y. Matsumoto-Mizuno, S. Date, and S. Shimojo, “Experience and practice of developing a brain functional analysis system using ICA on a Grid environment”, Advances in Computing Science (ASIAN '02), Hanoi, December 2002.

(3) Y. Mizuno-Matsumoto, S. Date, T. Kaishima, Y. Kadobayashi, and S. Shimojo, “A Grid application for an evaluation of brain function using Independent Component Analysis (ICA)”, 2nd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid2002), Berlin, May 2002.

4.2 QoSを考慮したネットワークアーキテクチャに関する研究

4.2.1 アクティブネットワーク技術等を用いたサービス運用管理技術の研究開発(通信・放送機構との共同研究)

 次世代ネットワークの課題とされる、ユーザの要求に応じたネットワーク品質を提供するサービス機構、および、それらに対応したサービス運用管理技術について、異なるドメイン間での連携や、トラヒック需要や網状態に応じた帯域・経路選択、高信頼性などの観点からの実用性と総合性を重視した研究開発を進めている。
 
複数ネットワーク間のインタワークに関する研究
 複数ドメイン間で帯域予約機能を提供するSimple Inter-Domain Bandwidth Broker Signaling (SIBBS)プロトコルに関して、実現上の問題点を検討した。その結果、帯域確保時の迅速なネットワークの設定と処理負荷軽減のためのQoSサーバ間での帯域予約手法(コアトンネル)の使用において、コアトンネルの生成あるいは変更アルゴリズムが規定されておらず、帯域資源の利用効率が低下しないようなアルゴリズムを決める必要があることが分かった。
 そこでまず、コアトンネルの作成区間について、全てのドメインの組合せ毎に作成するのではなく、短く区切ったトンネルを連結して使用する修正方式を考案し、シミュレーションで効果を調べた。その結果、トンネル帯域の利用効率、および帯域要求がトンネル帯域容量を越える確率は従来手法と同等の性能を示したが、帯域要求の到着率が低い領域での改善が見られた。また、ドメイン同士の接続関係(木構造、格子状、環状トポロジ)によらず、提案方式が有効であることが明らかとなった。
 次に、トンネルの帯域容量について、動的制御を行う際の最適な増減の幅ならびにタイミングを、ATMのVPの帯域制御アルゴリズムを参考に検討した。すなわち、一定の幅でまとめて増減を行う手法と常に余剰帯域を一定にするよう増減を行う手法、あるいは、トラフィックの増減の度にトンネル帯域を見直す手法と一定の時間間隔で見直す手法の組合せを比較評価した。その際、それらのアルゴリズムでは様々なパラメータの選択が難しいことが判明し、過去の傾向をもとにパラメータを適応的に更新する方式について着想を得た。すなわち、トラフィックの変動状況により帯域変更幅やしきい値を適応的に制御する手法を考案し、シミュレーションにより特性の評価・検証を行った。考案手法では、トラヒックの変動に対する追随特性が改善されるとともに、帯域要求が溢れる確率の目標値を直感的に設定できるという特徴を有する。

QoS管理網の構築
 試作したQoSサーバを用いて、サイバーメディアセンター、通信・放送機構北九州リサーチセンター、および、通信総合研究所(小金井市)間をJGN(Japan Gigabit Network)回線により結ぶQoS管理網を構築した。ネットワーク構成は、各拠点をネットワークドメインとしてQoS制御可能なルータとQoSサーバプロトタイプをそれぞれ配置し、そのルータを介してデジタルビデオ伝送アプリケーション等のアプリケーションで通信する形としており、現在、総合検証実験に向けてQoSサーバプロトタイプの相互接続動作の確認を継続的に行っている。共同研究を実施する研究者間での日常的なビデオ会議等に、研究成果を自ら試用することで、性能や利便性の評価・検証を行うとともに、課題やニーズ・テーマの発見へとつながることを期待している。

関連発表論文

(1) 本久勝一, 細川祐司, 八木輝, 馬場健一, 下條真司, “Diffservにおけるドメイン間での動的な予約帯域制御手法の評価,” 電子情報通信学会 技術研究報告 IN2002-2, pp. 7-18, May 2002.

4.2.2 IPネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発(優先帯域制御技術) (通信・放送機構との共同研究)

 DSLやケーブルインターネット等によるアクセス回線のブロードバンド化や、IPネットワーク関連機器の高機能化・低廉化等によって、VoIPやIP-VPNサービスなどが普及しつつある。このようなIPネットワークの急速な普及に合わせて、現行のPSTNがライフラインとして提供している緊急通報・重要通信の確保等と同等の機能をIPネットワーク上でも実現するための研究が必要とされている。 VoIPで
の110番、119番や警察や消防向けのVPNサービス等、品質確保が必要な通信を実現するために必要なインターネットにおける優先制御、帯域制御技術および、それを制御するためのポリシーサーバについて研究を実施している。

緊急・重要通信のための優先帯域制御
 現在のインターネットではDiffserv等の優先帯域制御技術が活用されていない。インターネット環境で優先帯域制御を活用するにはISP内部での優先帯域制御だけでなくIXでも対応が必要となる。また、IXやISP間のピアは複数存在し、これら全てを同時に優先帯域制御に対応させることは不可能であるため、緊急・重要通信のパケットを優先帯域制御可能なIXのみにルーティングする必要がある。
本研究では、ISPの基幹網やIXでの優先帯域制御技法について検討すると共に、緊急・重要通信のパケットを他のトラフィックから分離して、特定のIXに流すことが可能なIXのアーキテクチャとISPの基幹ネットにおけるルーティング技術の研究を進めている。MPLSを利用し、優先帯域制御の必要なトラフィックを分類して、トラフィックの種類ごとにLSPに振り分けてルーティングと優先帯域制御を
実現する方式を提案した。

関連発表論文
(1) 菊地高広, 野呂正明, 砂原秀樹, 下條真司, “インターネットにおけるライフラインの実現”, Internet Conference 2002, work in progress, November 2002.

(2) 野呂正明, 菊地高広, 砂原秀樹, 下條真司, “IPネットワークの課題と標準化動向”, Voice On the Net Japan 2002, December 2002(招待講演).

緊急・重要通信のための優先帯域制御ポリシーサーバ
 VoIP等のようにネットワークの品質に敏感なアプリケーションのサービスの制御にネットワークの利用可能帯域情報を利用することで高品質なサービスを提供できる可能性がある。これを実現するためには、ネットワークの全経路の帯域の利用状況を把握し、この情報を元にポリシーサーバ等のネットワークを管理するサーバとVoIPにおけるSIPサーバ等が連携し、端末が通信に利用しようとしている経路の帯域の空きに応じてVoIPの呼の制御などを行う必要がある。ネットワークの利用状況からIPパケットの経路の帯域の空き状況を把握できる方式について研究を進めており、同時に、ポリシーサーバとアプリケーションサービスを制御するサーバ(SIP proxy等)の連携プロトコルについて検討を進めている。

関連発表論文
(3) Takahiro Kikuchi and Masaaki Noro and Hideki Sunahara and Shinji Shimojo,”Lifeline Support of the Internet”, in Proceedings of SAINT2003 workshop, pp.323-327, January 2003.

4.2.3 Diffserv AF PHBにおける他通信との相互影響を考慮した帯域管理方式

 ストリームアプリケーションの普及に伴い、それらが発生する通信(以下、ストリームフロー)がIP ネットワーク上のトラヒックの多くを占める状況が今後想定される。UDP により通信されるストリームフローと、それ以外の一般的なTCP アプリケーション(以下、非ストリームフロー)のトラヒックが集約された場合、TCP とUDP の振る舞いの違いから、双方の相互影響によるサービス品質の劣化が問題となるため、これを緩和する新しい方式が必要となる。非ストリームフローは、その上位のアプリケーションにより、要求するQoS、トラヒックの統計的性質等に違いがあるため、それらを分類することにより、ストリームフローとの相互影響についても差異を生むことができると考えられる。そこで、これらをいくつかのクラスに分類し、それぞれのクラスに別のキューを割り当てた上で、各クラスの非ストリームフローとストリームフローとの相互影響の大きさを明らかにする。次に、ストリームフローを、到着時の混雑状況と、相互影響の大きさを考慮して各クラスに動的に分配収容する制御を行うことにより、双方の相互影響を緩和し、サービス品質劣化を抑制する新しいストリームフロー収容方式を提案する。シミュレーションにより提案方式の評価を行い、その有効性を示す。
図 6 ストリームフロー収容方式

関連発表論文
(1) 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “Diffserv AF PHBにおける他通信との相互影響を考慮したストリームフロー収容方式,”?電子情報通信学会技術研究報告 IN2002-280, pp.243-248, March 2003.

(2) 安川健太, 小林亜樹, 馬場健一, 山岡克式,?“非ス トリームフローとストリームフローの親和性に関す る検討,” 電子情報通信学会総合大会, B-7-57, March 2003.

(3) 安川健太, 篠宮俊輔, 馬場健一, 山岡克式,?“非ストリームフローへの影響を考慮したストリームフロー収容方式,”?電子情報通信学会総合大会, SB-7-8, March 2003.

(4) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Classification of non-stream flows to reduce negative interactions between stream and non-stream flows,” submitted to IEEE PACRIM 2003.

(5) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows on Diffserv AF PHB to reduce negative interactions between stream and non-stream flows,” submitted to Globecom 2003.

4.3 マルチメディア・コンテンツの配信および効果的な活用技術に関する研究

4.3.1 Webコンテンツ配信の高度化に関する研究
Webコンテンツの配送順序制御
 Webコンテンツは通常HTMLドキュメントとそれに埋め込まれた画像等のインラインオブジェクトから構成され、通常、サーバからの配送順序に従ってブラウザに表示されていく。本研究ではインラインオブジェクトの配送順序を制御できる機構を提案し、その有効性を示してきた。
 本年度は、提案機構を活用するためのツールとして、Webページの作成者向けの配送順序決定支援ツールの開発を行った。本ツールでは、「広告画像を最初に配送したい」、「新製品の画像はそれ以外の製品の画像より先に配送したい」というように、配送順序の指定をポリシーレベルで記述可能にすることにより、ページ毎に配送順序を指定するのではなく、複数のページに対して一括して配送順序の指定が可能である。また、GUIによってブラウザでの表示イメージの確認ができるなど、容易に配送順序の決定が行えるようにした。

関連発表論文
(1) 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “マルチメディア・コンテンツ配送のための配送順序決定支援ツール,” 情報処理学会論文誌, Vol. 43, No. 4, pp. 1079-1088, April 2002.
 
パイプラインリクエストを考慮したキャッシングプロキシ
 Webコンテンツ配信の高速化および利用帯域の削減、Webサーバの負荷削減のためにキャッシングプロキシがよく利用されている。本研究では、HTTP/1.1で導入されたパイプラインリクエストの特性を考慮したキャッシング手法を提案した。提案手法は、パイプラインリクエストで要求されるオブジェクト群のうち、最初の方に要求されるオブジェクトだけをキャッシュに保持していれば、それらをクライアントに配送している間にサーバから残りのオブジェクトを取得でき、全オブジェクトをキャッシュしていた場合と同じ配送時間で全オブジェクトの配送が完了することを利用した手法である(図7)。具体的には、クライアント側およびサーバ側のネットワーク帯域幅および遅延に基づき、キャッシュしておくべきオブジェクトの量を計算し、それらを高優先度でキャッシュする。本手法では、一つのページに対してキャッシュするオブジェクト数を減少させることによって生じる空き領域を他のページのオブジェクトをキャッシュするのに利用でき、平均配送時間の短縮効果が得られる。
 図8は、シミュレーションによる評価結果の一例であり、サーバ側のネットワーク帯域が2 Mbps、伝播遅延が200 ms、クライアント側のネットワーク帯域が2 Mbps、伝播遅延が100 msの場合の結果である。このように、提案手法は従来のLRUに基づくキャッシング手法よりも平均配送時間を短縮できることを示した。
図7 提案手法のアイデア 図8 評価結果の一例

関連発表論文
(2) 藤本拓, “HTTPリクエストの順序に基づくWebプロキシ上のキャッシュ置き換えアルゴリズム,” 大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻修士学位論文, February 2003.

4.3.2 P2P型情報共有基盤に関する研究
 近年、モバイル端末の高性能化やモバイル通信環境の普及、センサネットワーク技術の進展などにより、これまで以上に様々な情報が活用可能になってきている。そのような情報を有効に活用するためのアーキテクチャとして従来のサーバ中心のシステム設計を採用した場合、ユーザ数や扱うべき情報量の爆発によりコスト面や柔軟性の面で限界があるのは明白であり、それを解決するアーキテクチャとしてP2P (Peer-to-Peer)型のアーキテクチャが適していると考えられる。
 本研究では、特にユーザの状況や対象とするデータ自身の状況を考慮した、状況依存型情報活用アプリケーションを開発するためのプラットフォームの構築を目指して研究を推進している。そのようなアプリケーションの例として集合場所検索アプリケーションを取り上げ、そのプラットフォームに要求される要件を探った。このアプリケーションは、まず集合をかけるユーザの位置情報を取得し候補エリアを絞り、その候補エリアに存在する店舗情報を集合場所の候補として検索するとともに、その店舗の状況(混雑度や口コミによる評判など)を収集して評価することによりランキング表示を行うようなアプリケーションである。このようにインターネット上の情報を活用し、状況データを効果的に取得・処理できれば、携帯電話を使ったり検索エンジンで店舗を検索したりユーザ自身の知識だけ店を選択していた従来の集合場所の決定方法を変えることが可能になる。
 このようなアプリケーション開発プラットフォームとして、アプリケーション層、コンテキストアウェア層、P2Pネットワーキング層の3層からなるシステムアーキテクチャ(図9)を提案し、その実現方法について研究を推進した。このアーキテクチャは、従来のP2Pシステムの2層アーキテクチャにコンテキストアウェア層を加えることにより、各種の状況データの収集・処理をミドルウェアで効果的に行えるようにすることで、アプリケーション開発を容易にすることをねらったものである。
 さらに、その実現のための通信プロトコルとして、既存のP2Pプラットフォームの一つであるJXTAを利用した実現方法と、システム間での分散処理環境を構築する手段として注目されているWebサービスのプロトコルを利用した実現方法を検討した。
図9 提案するP2Pプラットフォームのシステムアーキテクチャ

関連発表論文
(1) 福村真哉, 金子雄, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “モバイル環境における状況依存型アプリケーションのためのP2Pプラットフォーム”, 電子情報通信学会第14回データ工学ワークショップ(DEWS 2003)論文集, March 2003.

(2) 小林幸司, “Webサービスを利用したP2P型情報 活用プラットフォーム,” 大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻修士学位論文, February 2003.

(3) 金子雄, “モバイル環境におけるコンテキスト依存型P2P情報検索サービスの構築,” 大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科情報システム工学科目卒業研究報告, February 2003.

4.4 ネットワークセキュリティに関する研究
4.4.1ネットワーク防御システムの研究(株式会社KDDI研究所との共同研究)

 ADSLなど高速通信基盤の普及に伴い、個人のインターネット常時接続が増えている。大学や企業でも内部ネットワークの規模は急速に拡大している。この利用者層の広がりに伴い、不正侵入やコンピュータウイルスなどのセキュリティ事故も急増している。今後の情報家電や携帯端末などより大規模な接続環境の普及に向けて安全性を確保するためには、抜本的なセキュリティ対策技術の研究開発が不可欠である。本研究では、個人用の小規模なものから大規模ネットワーク用に至るまで広く応用できるネットワーク防御システムの構築技術を確立すべく取り組んでいる。具体的な研究内容として、DNS(ドメイン名システム)の信頼性とセキュリティの向上、また侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験の2点がある。

DNSの信頼性とセキュリティの向上
 DNSはドメイン名とIPアドレスを対応づけるなど、インターネット上のアプリケーションで通信相手を指定する上で欠かすことのできない機能を提供する。しかし、現在のDNSはトランスポート層にUDPを使用しているため、信頼性の面で制約があり、ルートサーバーへのDoS(サービス拒否)攻撃などを招き、またファイアウォール等の運用上難しい問題を引き起こす原因となっている。本研究では、DNSのトランスポート層に、TCPの拡張の一つである T/TCP(トランザクショナルTCP)を導入することを提案した。また既存のDNSプログラムコードにT/TCPを実装して評価した。その上で、 T/TCP が DNS の問い合わせ処理の信頼性を向上させ、またファイアウォールの設定の自由度を広げるという面で、 DNS 全体のセキュリティを向上させ得る有効な代案となるという結論を得た。

関連発表論文

(1) Kenji Rikitake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa, and Shinji Shimojo, “Securing Public DNS Communication”, IPSJ SIG Notes 2002-CSEC-20, Vol. 2002, February 2003.

侵入検知技術の大規模ネットワークでの観測実験
 ネットワーク上でやり取りされるパケットの傾向を観測し、セキュリティ事故の予防につなげる侵入検知技術は、企業等で導入が進められている。しかし、ウイルス等不正アクセス情報を検知するための侵入パターンが多様化するにつれ、単独の侵入検知システムでは不正アクセスを予見し切れない事例が増加している。本研究では、前節に述べたDNSのアクセスパターンを解析することで、ネットワーク全体の侵入検知に役立つと同時に、DNS自身のセキュリティ強化につながることを提案した。

関連発表論文

(2) Kenji Rikitake, Keisuke Takemori, Yutaka Miyake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa, and Shinji Shimojo, “Design of Robust DNS by Intrusion Detection” ,Proceedings of IPSJ Computer Security Symposium 2002 (CSS2002), IPSJ Symposium Series, Vol. 2002, No. 16, pp. 17-22, 2002.

4.5 フォトニックネットワークアーキテクチャに関する研究

 近年の光伝送技術の発展には目覚しいものがあり、波長分割多重技術や光時分割多重技術などに、よってネットワークの回線容量は爆発的に増大してきた。しかし、光伝送技術とネットワーキング技術はおのおの別個の歴史を持ち、インターネットに適した光通信技術の適用形態については明らかになっていないのが現状である。短期的には、WDM技術を用いた高性能光パスネットワークがその中心技術になると考えられ、その点に着目した研究がおこなわれているが、さらに長期的な解としては、フォトニックネットワーク独自の通信技術も十分に考えられる。たとえば、フォトニックパケットスイッチングやより高度な通信チャネルとしての利用が考えられる。これらの点を鑑みて、それぞれの研究テーマに取り組んでいる。

4.5.1フォトニックパケットスイッチにおけるファイバ遅延線を用いた光バッファの構成に関する研究

 本研究では、フォトニックラベル処理に基づいたパケットスイッチ構成を対象とし、スイッチ構成として実用化の難しい光論理デバイスによる複雑な制御を不要にするため、簡単に構成できる遅延線を用いたバッファ付き2×2基本スイッチ及びそれらを組み合わせたセルフルーティング可能な多段スイッチを考える。また、基本的な性能を測るため、固定長パケットを取り扱うものとする。基本スイッチ及びそのパケットスケジューリングアルゴリズムはすでに提案されているが、パケットが到着しない場合にも実パケットと同様にバッファに空パケットを挿入して制御するなど、バッファの効率的な利用が図られていない。また、多段スイッチ構成とした場合の解析及び性能評価は行われていない。
 そこで、バッファの効率的な利用が可能なスケジューリングアルゴリズムを提案し、有効性を示した。しかしながら、バッファの状態数が多くなり、大規模なバッファにおいての評価が難しいという問題点があるため、このアルゴリズムをさらに改良し、少ない状態数でバッファの有効利用を図ることのできる手法を提案した。2×2バッファスイッチ、およびそれらを組み合わせた多段スイッチにおいて性能を調べ、さらに、多段スイッチにおいて競合解決の方法としてディフレクションルーティングを用いた場合の性能評価、実現コストを考慮した検討も併せて行った。その結果、提案方式はより効率的なバッファ利用が図ることができ、パケット棄却率、平均待ち時間どちらの特性も従来方式より改善できることを示した。

関連発表論文
(1) Ken-ichi Baba, Ryuusuke Takemori, Masayuki Murata, and Ken-ichi Kitayama, “A packet scheduling algorithm for the 2×2 photonic packet switch with FDL buffers”, in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002 (ECOC2002), vol.3, no.8.5.3, September 2002.

4.5.2ファイバ遅延線を用いた光バッファのためのパケットスケジューリングに関する研究

 本研究では、仮想的にバッファサイズを拡大できるWDM技術に基づいたFDLを用いた、可変長パケットを扱う同期型フォトニックパケットスイッチの性能を明らかにした。すなわち、スイッチに対する入力としてWDMによって多重化されたパケットを扱い、スイッチング時におけるオーバーヘッドを低減するためにスイッチ内部において一定のタイムスロット間隔での同期をとり、パケットスイッチングを行うものとする。また、フォトニックパケットスイッチ内での競合に対しては、光バッファリングおよび波長変換を用いて解決することとする。ここでは、光バッファの利用方法によって2つのアーキテクチャを考える。つまり、スイッチ内のすべての出力線にスイッチングされるパケットを1つのFDLバッファで共有して蓄積する共有バッファ型、および各出力線に設けられたそれぞれのFDLバッファに蓄積する出力バッファ型の2つのアーキテクチャを対象として、シミュレーションによる性能評価を行った。その結果、共有バッファ型アーキテクチャは、ネットワークの負荷が低い場合において、出力バッファ型アーキテクチャの1/入出力本数のFDLでも良い性能を示すことがわかった。逆に、出力バッファ型アーキテクチャは出力線ごとにFDLバッファを設置するため、ネットワークの負荷が高い場合においても共有バッファ型に比べ、パケット棄却を抑えたスイッチングが可能となることがわかった。
 次に、共有バッファ型スイッチでは負荷が高い場合にその性能が大きく低下することから、その問題を解決するために、パケット間空き領域低減手法を提案した。その結果、高負荷時においても安定した性能を示すことを明らかにした。さらに、パケットスケジューリングアルゴリズムのハードウェアでの実現性を考慮した上で、その動作シミュレーションを行うことにより、処理遅延時間の観点からその評価を行った。その結果、スケジューリングの際に扱う波長数が処理遅延時間に大きな影響を与えることを明らかにした。

関連発表論文
(1) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるパケット間空き領域の低減を考慮したスケジューリングアルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 (IN2002-35), vol.102, no.213, pp.13-16, July 2002.

(2) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Packet scheduling for WDM fiber delay line buffers in photonic packet switches”, in Proceedings of SPIE OptiComm2002, Vol.4874, pp.262-273, July 2002.

(3) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Scheduling algorithm with consideration to void space reduction in photonic packet switch”, to be appeared in IEICE Transactions on Communications, March 2003.

(4) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “ファイバ遅延線バッファを備えたフォトニックパケットスイッチにおけるパケットスケジューリングアルゴリズム”, 電子情報通信学会技術研究報告 IN2002-282, vol.102, no.694, pp.255-260, March 2003.

Adobe Systems
図10 共有バッファ型フォトニックパケット
スイッチアーキテクチャ

4.5.3フォトニックグリッド環境における分散計算のためのメモリアクセス手法に関する研究
 WDM技術を基盤としてインターネットの高速化を図る、いわゆるIP over WDMネットワークの研究開発が、現在さかんに進められている。また、それを一歩進めてWDM技術以外のさまざまなフォトニック技術を下位レイヤの通信技術としたGMPLSと呼ばれるインターネットのルーティング技術の標準化もIETFで進められている。さらに、フォトニックネットワークの真のIP化を狙って、フォトニック技術に基づいたフォトニックパケットスイッチに関する研究も始められつつある。しかしながら、これらの諸技術は現在のインターネット技術を是としている。すなわち、情報を扱う細粒度としてIPパケットを扱い、ネットワーク上でそれをいかに高速に運ぶかを研究開発の目標としている。そのため、パケット交換技術に基づいたアーキテクチャをとる限り、個々のコネクションに対する高品質通信の実現は非常に難しい。
 SANやグリッド計算など新しい応用技術では、高速かつ、高信頼な通信パイプをエンドユーザに提供する必要があり、そのためには、エンドユーザ間に大容量波長パスを設定し、ユーザに提供することが考えられる。すなわち、既設のファイバを利用し、あるいは必要に応じて、ファイバを新たに敷設し、ファイバおよびファイバ内に多重化された波長を最小粒度として情報の交換を行うフォトニックネットワークを構築することによって、超高速かつ高品質な通信パイプをエンドユーザに提供することが可能である。そこで、ネットワークノードや計算機群を光ファイバで接続したフォトニックグリッド上に仮想チャネルをメッシュ状に張ることにより、高速チャネル上での分散計算が可能になる。さらには、フォトニックグリッド上に仮想リングを構成し、リング上にデータを載せることによって、波長を仮想的な共有メモリとすることも可能である。その結果、広域分散システムにおける共有メモリと通信チャネルの区別の必要がなくなり、コンピュータ間の高速なデータ交換が可能になると考えられる。
 本研究では、フォトニックグリッド上に仮想リングを構成した際の共有メモリアクセス方式を提案した。共有メモリとして光リングを構成する場合、従来の共有メモリシステム同様に、共有メモリに対する競合とキャッシュの整合性の問題が生じる。また、長距離ファイバ上に展開する仮想光リングへはアクセスのタイミングや頻度に制約がある。そのため、そのことを十分に考慮したアクセス方式を考え、シミュレーションを用いてその性能を評価した。その結果、広域に分散した計算機群で仮想光リングを用いてデータの共有をはかる場合、メモリアクセスの遅延の影響が大きいことから、制御メッセージの交換の少ない方式が非常に有効であることがわかった。

4.6 超高圧電子顕微鏡の遠隔操作システムの構築技術に関する研究

IPv6ネットワークを用いた高品質画像による遠隔操作実験
 超高圧電子顕微鏡の遠隔操作システム構築の一環として、本年度はIPv6ネットワークを用いてSDTV品質の画像およびHDTV品質の画像を用いた遠隔操作実験を行った。昨年度までの実験ではATMの専用線を用いたプライベートな転送実験を行っていたが、今回のグローバルネットワークにおける転送実験により、遠隔操作システムの実環境での利用可能性を示した。また、HDTV品質の画像伝送により、遠隔操作時の画像品質の改善および現状のIPv6ネットワークにおける転送性能面での問題点を明らかにした。さらに遠隔地からの高精細画像取得を実現するため高精細冷却CCDカメラの導入を行った。今後、システムの問題点の改良を進め、本研究で得られたノウハウを他の研究分野に応用していくことを検討している。

関連発表論文
(1) 秋山豊和, 下條真司, “超高圧電子顕微鏡の遠隔操作の取り組み”, 計算工学, Vol.7, No.4, Nov. 2002.

(2) 秋山豊和,“Telescience プロジェクトの現状報告”,Proceedings of APAN Workshop 2002,pp.85-95, Nov. 2002.

(3) Toyokazu Akiyama, Shinji Shimojo, Shojiro Nishio, Yoshinori Kitatsuji, Steven Peltier, Thomas Hutton, Fang-Pang Lin, “Telecontrol of Ultra-High Voltage Electron Microscope over Global IPv6 Network”, in Proceedings of SAINT2003 Workshops, pp.184-187, Jan. 2003.

5.社会貢献に関する業績

5.1 教育面における社会貢献

5.1.1 学外活動
(1) 大阪大学社会人教育講座 セキュア・ネットワークセミナー開催
(2) 国立情報学研究所主催情報セキュリティポリシー入門講座「阪大におけるセキュリティポリシー」
(3) 神戸大学総合情報処理センターにて講演「大阪大学におけるネットワークセキュリティ対策」, March 2003
(4) 関西医科大学にて講演「セキュリティポリシー」
(以上 野川)
(5) タイ・タマサート大学との遠隔講義シリーズ コンテンツ作成支援系の協力

5.1.2 研究部門公開

2002年度いちょう祭
 4月29日, 30日の2日間に渡って,いちょう祭が開催された。サイバーメディアセンターでは、センターが提供している情報基盤サービスの紹介、および、特に全国共同利用設備であるスーパーコンピュータ SX-5、新しく構築されたアカウント統合管理システムやポータルシステムを含む汎用機システムの一部、キャンパスネットワーク ODINS (Osaka Daigaku Information Network System) の基幹ネットワーク部分の見学会を開催した。参加者は13名であった。当日実施したアンケート結果等を反映し、今後はより視覚的に分かりやすいデモンストレーションを取り入れていく予定である。
写真 5 いちょう祭での公開の様子

SC2002への出展
 11月16日~22日の1週間、米国ボルチモアにおいてSuperComputing 2002が開催された。SuperComputing (SC) は、毎年11月のこの時期に開催される、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術およびネットワーク技術に焦点をおく国際会議である。この国際会議期間中には、世界各国のHPCやネットワーク関連の研究者らが集い、研究発表、議論を展開することが例年の行事になりつつある。また、この国際会議と併設して研究展示も行われる。そこでは、毎年、米国、ヨーロッパ、アジアといった世界各国からの研究機関、大学、企業からの展示ブースが出展され、国際会議同様盛況を極めるという状況になっている。
 サイバーメディアセンターも欧米諸国の研究機関に遅れをとることなく、SCへの積極的な参加を行ってきており、SCへの参加は2002年度で3度目となる。SC2002においては、過去2年間のSCでの展示経験を活かし、本研究部門の研究成果をより効果的に欧米諸国の研究者らに示すことに成功している。
 サイバーメディアセンターは、スーパーコンピュータのような超並列計算機の運用管理経験の蓄積があるだけでなく、超高速ネットワークが集約するネットワークハブとして機能するという2つの特徴・特色を有している。SC2002では、これらの特徴・特色を最大限に活かしつつ本研究部門の研究開発成果を示すべく、2つのシステムデモンストレーションを行った。その1つが脳磁図データ解析システムである。このシステムは、大阪、Nanyang Technological University(シンガポール)、SC2002 カンファレンスホール(Baltimore)を結ぶネットワーク上に構築され、大阪で計測された脳機能データがシンガポールおよび阪大サイバーメディアセンターで解析計算され、さらにはボルチモアにて解析結果が可視化されるというシステムであった。もう1つは、米国UCSD、本学超高圧電子顕微鏡センター、SC2002会場を結ぶ超高速ネットワーク上で、本学超高圧電子顕微鏡センターより送信される高解像度の映像を損失なくリアルタイムに伝送するというシステムであった。これらのシステムのデモンストレーションはSC会場においても、欧米諸国の研究機関の展示にひけをとることなく、多くの来客を招く好評なものとなり大変有意義であった、とわれわれ研究部門一同自負している。本研究部門では、そのようなSC2002での研究成果展示の成功の余韻に浸ることなく、2003年11月アリゾナで開催予定のSC2003にむけた研究開発を日夜行っていくことを考えている。
写真 6 SC2002でのデモンストレーション

5.2 学会活動

5.2.1 国内学会における活動
(1) 電子情報通信学会 インターネットアーキテクチャ研究会(IA) 専門委員会委員長
(2) 日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会(ITRC) 副委員長
 (以上 下條)

5.2.2 論文誌編集
 該当なし

5.2.3 国際会議への参画
 以下の国際会議の運営に参画し、国際的な学術交流のために貢献している。
(1) ASIAN’02 (Hanoi Vietnam) , Program Committee
(2) The 2nd PRAGMA workshop (Korea Soul), Working Group Chair
(3) SAINT2003 (Orlando America), Workshops Chair
(4) Global Grid Forum7 Life Sciences Grid   Mini-Symposium Organizer
(5) The International Symposium on Grid Computing (ISGC) 2003 & TW Grid Workshop
(6) CCGrid 2003 Program Committee
(以上 下條)

5.2.4 学会における招待講演・パネル
(1) IA研究会「グリッド技術の現状と課題」
(2) ソフトウェア科学会総合大会「21世紀の科学とITの関係―グリッドがもたらすもの-」
(3) 日本ソフトウェア科学会 「バイオグリッド:グ     リッドの動向とグリッドのバイオへの応用」
(4) The International Symposium on Grid Computing (ISGC) 2003 & TW Grid Workshop
(以上 下條)

5.2.5 招待論文
 該当なし

5.2.6 学会表彰
 該当なし

5.3 産学連携

5.3.1 企業との共同研究
 以下のように企業との直接的な共同研究を進めている。
(1) 通信・放送機構 「アクティブネットワーク技術等を用いたネットワークアーキテクチャの研究開発」
(2) 通信・放送機構 「IPネットワーク上でのライフラインの実現のための研究開発(優先帯域制御技術)」
(3) ケイディーディーアイ研究所 「ネットワーク防御システムの研究」

5.3.2 学外での講演
(1) IT連携フォーラムOACIS 第二回シンポジウム「サイバーメディアセンターのアクティビティ」(大学紹介)
(2) 大阪大学21世紀COE 第1回「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」に関するシンポジウム「ネットワーク共生環境におけるコンテンツ流通機構の構築」
(3) 自民党文教分科会 「グリッドコンピューティングについて」
(4) 関西研究会ITBLシンポジウム「バイオグリッドとITBL」
(5) サイエンティフィックシステム HPCミーティング2002 「バイオグリッドプロジェクト」
(6) 第5回 日本SGI HPC Open Forum大会「バイオグリッドの目指すもの」
(7) Data Gridミニワークショップ「バイオグリッドプロジェクト 文部科学省PR2002スパコンネットの構築におけるデータグリッド
(8) 第16回 NEC HPC研究会「バイオグリッドプロジェクト」
(9) JST異分野研究者交流促進事業ワークショップIn Silico Humanにて講演「In Silico Human Projectにおけるネットワークセキュリティについて」, October 3, 2002
(以上 下條)
(10) 大阪大学21世紀COE 第1回「ネットワーク共生環境を築く情報技術の創出」に関するシンポジウム「セキュア・ネットワーク構築のための人材育成プログラム」
(以上 馬場)
(11) 日商エレクトロニクス 「セキュリティポリシーの考えと大阪大学のネットワーク」, July 16, 2002
(12) ゲノムテクノロジービジネスフォーラム 「バイオグリッドプロジェクト」, September 19, 2002
(13) IT連携フォーラムOACIS第4回技術座談会にて講演「セキュア・ネットワーク構築のための技術ならびに人材育成について」, January 16, 2003
(以上 野川)

5.3.3 特許
下條真司 「不正処理判定方法、データ処理装置、コンピュータプログラム、及び記録媒体」出願中

5.4 プロジェクト活動

(1) 文部科学省 科学研究費補助金特定領域研究C 「ITの進化の基盤を拓く情報学研究」A05班「Grid技術を適応した新しい研究手法とデータ管理技術の研究」(下條)
(2) 文部科学省 科学技術振興調整費 先導的研究等の推進 「モバイル環境向きP2P型情報共有基盤の確立」(下條、春本)
(3) 文部科学研究費基盤研究A 「デジタルコンテンツとしての懐徳堂研究」(下條、馬場、春本)
(4) 文部科学省 科学技術振興調整費 振興分野人材養成 「セキュアネット構築のための人材育成プログラム」(下條、馬場、野川、秋山)
(5) 通信・放送機構 「相互接続ネットワークにおけるVoIP実現のための研究開発」(下條)
(6) 文部科学省 産学官連携イノベーション創出事業 「構造解釈に基づいたセキュリティプログラムの開発」(下條、野川、齋藤)
(7) 文部科学省科学技術振興費ITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」(下條、伊達)

5.5 その他の活動

(1) 大阪府 総務サービス整備運営事業に係る包括的業務委託企画提案審査委員会委員
(2) 通信・放送機構 通信・放送融合技術開発テスト ベッド利用審査委員
(3) 通信・放送機構 「相互接続ネットワークにおけるVoIP実現のための研究開発」プロジェクト総括責任者
(4) 日本原子力研究所 原子力コード研究委員会専門委員
(5) 日本学術振興会 産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会 運営委員長
(6) 国際日本文化研究センター 情報システム検討委員会委員
(7) 国立情報学研究所 スーパーSINET推進協議会委員
(8) 通信・放送機構 けいはんな情報通信研究開発支援センター公募利用審査委員会委員
(9) 独立行政法人産業技術総合研究所 レビューボード委員
(10) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 評価委員会委員
(11) 総務省情報通信政策局 ネットワーク・ロボット技術に関する調査研究会 構成員
(12) 大阪科学技術センター ITBL技術普及・利用動向調査委員会 数理・情報科学分科会委員
(13) 関西情報・産業活性化センター ITシンポジウム「Info Tech’2002」プログラム委員
(14) イメージ情報科学研究所 研究委員会委員
(15) 日本能率協会 Internet&Mobil2002企画委員会委員長
(以上 下條)
(16) 総務省情報通信政策局 戦略的情報通信研究開発推進制度 専門評価委員
(17) 基盤技術研究促進センター 技術評価委員
(18) 基盤技術研究促進センター 成果管理評価委員
(19) 通信・放送機構 「アクティブネットワーク技術等を用いたネットワークアーキテクチャの研究開発」研究フェロー
(以上 馬場)
(20) 日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会委員
(21) 兵庫県情報(IT)セキュリティ高等教育研究機関事業化 検討委員会スタッフ
(22) 財団法人医療情報システム開発センター IPv6医療応用検討委員会委員
(23) 新八尾市立病院 総合医療情報システムに関する提案の評価
(24) 日刊工業新聞社主催 関西ナノテクノロジーフェアーにて、超高圧電子顕微鏡センター出展ブースにおけるネットワーク接続を支援
(以上 野川)

2002年度研究発表論文一覧

著書
 該当なし

学会論文誌
(1) Yuko Mizuno-Matsutmo, Gholam Motamedi, Robert Webber and Ronald Lesser, “Wavelet- crosscorrelation analysis can help predict whether bursts of pulse stimulation will terminate afterdischarges”, Clin. Neurophysiol, vol. 113, no. 1, pp. 33-42, January 2002.

(2) 福村真哉, 中野賢, 春本要, 下條真司, 西尾章治郎, “マルチメディア・コンテンツ配送のための配送順序決定支援ツール”, 情報処理学会論文誌, vol. 43, no. 4, pp. 1079-1088, April 2002.

(3) Gholam Motamdi, Ronald P. Lesser, Yuko Mizuno-Matsumoto, B. Gordon and RobertWebber, “Optimizing parameters for terminating afterdischarges with electrical stimulation of the cortex”, Epilepsia, vol. 43, no. 8,pp. 836-846, August 2002.

(4) 水野(松本) 由子, 伊達進, 甲斐島武, “グリッド技術による医用インフラストラクチャ”, 電子情報通信学会論文誌B, vol. J85-B, no. 8, pp. 1261-1268, August 2002.

(5) Kenji Rikitake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “DNS Transport Security and T/TCP”,IPSJ Journal (now under review), October 2002.

(6) 秋山豊和, 下條真司, “超高圧電子顕微鏡の遠隔操作の取り組み”, 計算工学, vol. 7, no. 4, November 2002.

(7) Satoshi Ukai, Kazuhiro Shinosaki, Ryoshei Ishii, Asao Ogawa, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyoshi Inouye, Norio Hirabuki, S.E. Robinson and Masatoshi Takeda, “Parallel distributed processing neuroimaging in the stroop task using spatially filtered MEG analysis”, Neurosci Lett, vol. 334, pp. 9-12, November 2002.

(8) 川口俊介, 篠崎和弘, 鵜飼聡, 石井良平, 山本雅清, 水野(松本) 由子, 平吹度夫, 吉峰俊樹, 武田雅俊, “色彩を伴う要素性視覚発作を呈したてんかん1 症例の縦断的MEG 研究”, 大阪てんかん研究会雑誌, vol. 13, no. 1, pp. 1261-1268, November 2002.

(9) 春本要, 藤本拓, 中野賢, 西尾章治郎, “パイプラインリクエストを考慮したWebキャッシングプロキシ上での配送順序変更方式”, 情報処理学会論文誌, February 2003. 投稿中.

(10) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Scheduling algorithm with consideration to void space reduction in photonic packet switch”, to be appeared in IEICE Transactions on Communications, March 2003.

国際会議会議録
(11) Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date, Takeshi Kaishima, Kazuhiro Shinosakai, Shinichi Tamura and Shinji Shimojo, “Development of high performance computing system for MEG data using independent component analysis on Globus”, in The International Conference on Bioinformatics 2002 (InCoB 2002), February 2002.

(12) H.W. Lee, Robert Webber, R.L. Skolasky an Gholam Motamedi, Yuko Mizuno-Matsumoto and Ronald Lesser, “Optimization of brief puslse stimulation to terminate afterdischarges: An approach using neighbor cross-correlation coefficient”, in 54th annual meetings of American Academy of Neurology (AAN), April 2002.

(13) Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date, Takeshi Kaishima, Youki Kadobayashi and Shinji Shimojo, “A Grid application for an evaluation of brain function using Independent Component Analysis (ICA)”, in 2nd IEEE/ACM International Symposium on Cluster Computing and the Grid (CCGrid2002), May 2002.

(14) Takeshi Kaishima, Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date, Shunsuke Kawaguchi, Satoshi Ukai, Masakiyo Yamamoto, Kazuhiro Shinosaki and Shinji Shimojo, “An Application for the Evaluation of Brain Function using Independent Component Analysis (ICA)”, in NeuroImage (CD-Rom), Vol. 16, No. 2, June 2002.

(15) Yuko Mizuno-Matsumoto, Masatsugu Ishijima, Kazuhiro Shinosaki, Takahi Nishikawa, Satoshi Ukai, Y. Ikejiri, Ryouhei Ishii, Hiromasa Tokunaga, Susumu Date, Tsuyoshi Inouye, Shinji Shimojo and Masatoshi Takeda, “MEG studies aid in revealing a remedy for Transient Global Amnesia (TGA)”, in 8th International Conference on Functional Mapping of the Human Brain (HBM), pp. 869-870, June 2002.

(16) Satoshi Ukai, Kazuhiro Shinosaki, Ryouhei Ishii, Asao Ogawa, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyoshi Inouye, Norio Hirabuki, Toshiki Yoshimine, S.E. Robinson and Masatoshi Takeda, “Spatially filterd MEG analysis estimates propagation of cortical activities during the stroop task”, in 8th International Conference on Function Mapping of the Human Brain (HBM), pp. 409-413, June 2002.

(17) Seiichi X. Kato, Takahiro Kudoh, Ryoji Matsumoto and Kazunari Shibata, “Dependence on the initial magnetic field strength of physical quantities in 3D MHD jets”, in The Proceedings of the IAU 8th Asian-Pacific Regional Meeting, July 2002.

(18) Takashi Yamaguchi, Ken-ichi Baba, Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Packet scheduling for WDM fiber delay line buffers in photonic packet switches”, in Proceedings of SPIE OptiComm2002, Vol.4874, pp.262-273, July 2002.

(19) Yuko Mizuno-Matsumoto, Mika Ogata, Atsushi Matsumoto, Toshiko Masuda, Satoshi Ukai, Syunsuke Kawaguchi, Matakiyo Yamamoto, Susumu Date, Kazuhiro Shinosaki, Shinji Shimojo and Masatoshi Takeda, “The relationship between the mental status of mothers and functional changes in the brain of children who were emotionally stimulated by watching videos”, in XII World Congress of Psychiatry (WPA), vol. 2, p. 75, August 2002.

(20) Seiichi X. Kato, Takahiro Kudoh, Ryoji Matsumoto and Kazunari Shibata, “3D Magnetic field structure in numerical simulations of jets”, in Jets 2002: Theory and Observations in YSO’s, September 2002.

(21) Ken-ichi Baba, Ryuusuke Takemori, Masayuki Murata, and Ken-ichi Kitayama, “A packet scheduling algorithm for the 2×2 photonic packet switch with FDL buffers”, in Proceedings of 28th European Conference on Optical Communication 2002 (ECOC2002), vol.3, no.8.5.3, September 2002.

(22) Takeshi Kaishima, Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date and Shinji Shimojo, “An Application of Dynamic Algorithm for Brain Function Analysis”, in Proceedings of the International Symposium for Young Researchers on Modeling and their Applications (IA’02), pp. 65-70, October 2002.

(23) Seiichi X. Kato, “Numerical Simulation of Astrophysical Jets”, in Proceedings of the International Symposium for Young Researchers on Modeling and their Applications (IA’02), pp. 117-120, October 2002.

(24) Kenji Rikitake, Keisuke Takemori, Yutaka Miyake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “Design of Robust DNS by Intrusion Detection”, in Proceedings of IPSJ Computer Security Symposium 2002 (CSS2002), vol. 2002, no. 16, pp. 17-22, Osaka City University, IPSJ, pp. 17?22, October 2002.

(25) Takeshi Kaishima, Yuko Mizuno-Matsumoto, Susumu Date and Shinji Shimojo, “The Experience and Practice of Developing a Brain Functional Analysis System using ICA on a Grid Environment”, in Lecture Notes in Computer Science (LNCS2550), pp. 98-109, December 2002.

(26) M. Kitayama, Hiroshi Otsubo, Ryouhei Ishii, Yuko Mizuno-Matsumoto and III Snead, “Wavelet-frequency analysis of seizures on subdural EEG in patients with focal cortical dysplasia”, in Neurology, The American Epilepsy Society 56th Annual Meeting, December 2002.

(27) Satoshi Ukai, Shinosaki Kazuhiro, Ryouhei Ishii, Asao Ogawa, Yuko Mizuno-Matsumoto, Tsuyoshi Inouye, Norio Hirabuki, Toshiki Yoshimine, S.E. Robinson and Masatoshi Takeda, “Spatially filtered MEG analysis stimates propagation of cortical activities during the stroop task”, pp. 409-413, December 2002.

(28) S. Parvez, M. Kitayama, Ryouhei Ishii, Yuko Mizuno-Matsumoto and Hiroshi Otsubo, “Wavelet analyis can predict whether neonates with electrographical seizures develop post-neonatal seizures”, in Neurology, The American Epilepsy Society 56th Annual Meetings (AES), December 2002.

(29) Toyokazu Akiyama, Shinji Shimojo, Shojiro Nishio, Yoshinori Kitatsuji, Steven Peltier, Thomas Hutton and Fang-Pang Lin, “Telecontrol of Ultra-High Voltage Electron Microscope over Global IPv6 Network”, in SAINT2003 workshop, pp. 184-187, January 2003.

(30) Kenji Rikitake, Koji Nakao, Hiroki Nogawa and Shinji Shimojo, “Securing Public DNS Communication”, to appear in IPSJ SIG Notes 2002-CSEC-20, vol. 2002, , February 2003.

(31) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Dynamic class assignment for stream flows on Diffserv AF PHB to reduce negative interactions between stream and non-stream flows,” submitted to Globecom 2003 February 2003.

(32) Kenta Yasukawa, Ken-ichi Baba, and Katsunori Yamaoka, “Classification of non-stream flows to reduce negative interactions between stream and non-stream flows,” submitted to IEEE PACRIM 2003, March 2003.

(33) Shinya Fukumura, Tadashi Nakano, Kaname Harumoto, Shinji Shimojo and Shojiro Nishio, “Realization of Personalized Presentation for Digital Contents Based on Browsing History”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers, and Signal Processing (PACRIM’03), March 2003. submitted.

(34) Kaname Harumoto and Shinji Shimojo, “A P2P Platform Architecture for Context-Sensitive Applications and Its Implementation Using Web Services”, in Proceedings of 2003 IEEE Pacific Rim Conference on Communications, Computers, and Signal Processing (PACRIM’03), March 2003. submitted.

口頭発表(国内研究会など)
(35) 水野(松本) 由子, “Asian and Pan-Pacific area におけるBioinfomatics 研究の状況”, 第5 回バイオグリッド研究会, March 2002.

(36) 本久勝一, 細川祐司, 八木輝, 馬場健一, 下條真司, “Diffserv におけるドメイン間での動的な予約帯域制御手法の評価”, 電子情報通信学会技術研究報告IN2002-2, pp. 7-12, May 2002.

(37) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “フォトニックパケットスイッチにおけるパケット間空き領域の低減を考慮したスケジューリングアルゴリズム,” 電子情報通信学会技術研究報告 IN2002-35, vol.102, no.213, pp.13-16, July 2002.

(38) 水野(松本) 由子, 伊達進, 甲斐島武, 篠崎和弘, 下條真司, “脳磁図の非定常解析に関する研究”, 第17 回生体・生理工学シンポジウム(BPES)2002, pp. 201?204, September 2002.

(39) 佐藤和久, 加藤精一, 工藤哲洋, 松元亮治, 嶺重慎, 柴田一成, “長時間計算によるMHD ジェットの各物理量の磁場依存性”, 2002 年日本天文学会秋期年会, October 2002.

(40) 馬場貴仁, 加藤天美, 水野(松本) 由子, 真渓歩, 齊藤洋一, 谷口雅章, 篠崎和弘, 下條真司, 吉峰俊樹, “体性運動感覚野皮質の運動関連脳波解析による運動意図判定”, 第40 回日本人工臓器学会大会, October 2002.

(41) 秋山豊和, “Telescience プロジェクトの現状報告”, in Proceedings of APAN Workshop 2002, pp. 85?95, November 2002.

(42) 上原一浩, 佐藤和久, 加藤精一, 工藤哲洋, 柴田一成, “原始星ジェットにおける質量降着率と質量放出率の磁場依存性の2.5 次元磁気流体シミュレーションによる研究”, 2003 年日本天文学会春季年会, March 2003.

(43) 山口貴詩, 馬場健一, 村田正幸, 北山研一, “ファイバ遅延線バッファを備えたフォトニックパケットスイッチにおけるパケットスケジューリングアルゴリズム”, 電子情報通信学会技術研究報告 IN2002-282, vol.102, no.694, pp.255-260, March 2003.

(44) 安川健太, 馬場健一, 山岡克式, “Diffserv AF PHBにおける他通信との相互影響を考慮したストリームフロー収容方式,”?電子情報通信学会技術研究報告 IN2002-280, pp.243-248, March 2003.

(45) 安川健太, 小林亜樹, 馬場健一, 山岡克式,?“非ストリームフローとストリームフローの親和性に関する検討,” 電子情報通信学会総合大会, B-7-57, March 2003.

(46) 安川健太, 篠宮俊輔, 馬場健一, 山岡克式,?“非ストリームフローへの影響を考慮したストリームフロー収容方式,”?電子情報通信学会総合大会, SB-7-8, March 2003.

解説・その他
(47) 野川裕記, 斉藤和典, 馬場健一, “セキュア・ネットワーク構築のための人材育成”, Cyber Security Management, vol. 4, no. 38, pp. 50?55, December 2002.

2002年度特別研究報告・修士論文・博士論文

博士論文
(48) Yuko Mizuno-Matsumoto, “A Study on Medical Infrastructure for Brain Function Diagnosis on Grid”, Ph.D thesis, Graduate School of Engineering, Osaka University, January 2003.

修士論文
(49) 甲斐島武, “グリッド環境における計算資源の異質性を考慮したスケジューリングシステムに関する研究”, 大阪大学大学院工学研究科 修士学位論文, February 2003.

(50) 小林幸司, “Web サービスを利用したP2P 型情報活用プラットフォーム”, 大阪大学大学院工学研究科 修士学位論文, February 2003.

(51) 趙維庚, “グリッド技術を用いた脳画像3 次元再構成の高速化に関する研究”, 大阪大学大学院工学研究科 修士学位論文, February 2003.

卒業研究報告
(52) 市川昊平, “グリッド技術を用いた脳機能解析及び診断支援ポータルに関する研究”, 大阪大学工学部 特別研究報告, February 2003.

(53) 大塚敏晴, “通信異常時におけるbind の計算資源消費に関する定量的評価”, 大阪大学工学部 特別研究報告, February 2003.

(54) 武田伸悟, “ユーザ利便性を考慮したセキュアグリッドファイルシステムに関する研究”, 大阪大学工学部 特別研究報告, February 2003.