新汎用コンピュータシステムの概要
1.はじめに
サイバーメディアセンターでは、旧大型計算機センターから引き継ぎ運用を行ってきた汎用コンピュータシステムを更新し、平成14年3月25日より新たな汎用コンピュータシステムとして運用を開始しました。今回の更新は、平成12年4月に旧大型計算機センター、旧情報処理教育センター、図書館の一部の統合によりサイバーメディアセンターが設立されてから初めての更新となります。
近年、研究活動において文献データベースや電子ジャーナル等の「情報」や「コンテンツ」、さらには研究成果としての「知識」を活用することが重要視されてきており、サイバーメディアセンターに対してもそのようなサービスに対する要望が高まっています。また、学内においても利用者端末が不足しているといった問題があり、端末整備をはじめとする情報アクセス環境の整備が急務となっています。そこで、今回の更新では、旧大型計算機センターの全国共同利用施設としてのサービスのみならず、旧情報処理教育センターが担っていた教育関連のサービスや、電子図書館的なサービスも考慮した総合的なシステムを企画しました。つまり、これまでのスカラー型並列計算機システムによる高速計算サービスを中心としたシステムから、「情報」や「コンテンツ」を効果的に提供することによる多角的な教育・研究者支援システムへとコンセプトを転換しています。
以下では、新汎用コンピュータシステムの概要について説明します。
2.新汎用コンピュータシステムの構成
新システムの概要図を図1に示します。新システムは、大きく分けて次のサブシステムから構成されます。
- アプリケーションサーバシステム
全国共同利用サービスとして提供されるアプリケーションサーバ、フロントエンド端末、WWWサーバ、メールサーバ、ニュースサーバ、ダイアルアップアクセスサーバ等から構成されます。
- 個人化情報提供システム(ポータルシステム)
各ユーザに合わせた情報提供を行うためのシステムです。
- ディジタルコンテンツ
研究活動を支援するデータベースを提供します。
- 利用者端末群および情報コンセントシステム
学内に配置され、ユーザの情報アクセス環境を提供するシステムです。
- アカウント統合管理システム
全国共同利用ユーザおよび学内ユーザのアカウント情報の管理を一元的に行うためのシステムです。

図1:新汎用コンピュータシステムの概要図
2.1 アプリケーションサーバシステム
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図2:アプリケーションサーバ外観 |
汎用コンピュータシステムは、これまでUNIXをOSとする高性能並列演算サーバ(HP社製Exemplar V2500)を中心としたシステムを提供してきましたが、近年のパーソナルコンピュータやワークステーションの高性能化、低価格化により、研究室で所有する計算機で多くの計算処理が実行できるようになり、またより高速な計算を必要とする処理は平成13年1月に導入したスーパーコンピュータSX-5で処理できるようになったことから、演算サーバの利用率は思ったほど上がりませんでした。そこで、今回の更新では、演算サーバとしての規模を縮小し、むしろ構造解析や分子軌道計算などに特化したアプリケーションの実行を中心としてサービスすることとし、Intel社のItaniumプロセッサを搭載した日本電気社製Express5800/1160Xaをアプリケーションサーバとするシステムに更新しました。
アプリケーションサーバの諸元を表1に示します。このサーバは、FORTRAN90やCによるプログラム開発および実行、MSC.MarcやGaussian98といったアプリケーションの実行およびSX-5のためのプログラム開発を行うための高性能なサーバとして提供します。
フロントエンド端末は、HP社製Visualizeに替わり、日本電気社製Express5800/54Wd (Pentium 4 / 1.7GHz)に更新しました。OSはLinuxを採用し、SX-5のためのプログラム開発環境等を提供します。
表1:アプリケーションサーバ諸元
項 目 |
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機種
CPU
主記憶
OS
ソフトウェア
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日本電気 Express5800/1160Xa
Intel Itanium (800MHz), 4 CPU
SPECint2000: 312 (1 CPU)
SPECfp2000: 707 (1 CPU)
SPECfp_rate2000: 31
4GB(共有メモリ型)
IA-64 Linux
FORTRAN90コンパイラ
Cコンパイラ
数値計算ライブラリ
(ASL, ASLSTAT, ASLCINT)
SX-5 クロスコンパイラ
SX-5 開発・解析環境
MSC.Marc
Gaussian98 |
2.2 個人化情報提供システム
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図3:個人化情報提供システム画面表示例 |
個人化情報提供システム(ポータルシステム)として、日本電気社製StarOffice21ビジネスポータルを中心としたWebポータルシステムを導入しました。システムは6台のフロントエンドサーバおよび2台のバックエンドサーバ(LDAPサーバ)から構成されます。
本システムはユーザ個人に適した情報提供を行うための基盤となるシステムであり、ユーザの種別(全国共同利用ユーザ、学内教官、学内職員、学内学生等)によってセンターから提供する情報を変更したり、ユーザ自身がポータルページ内のコンポーネント(外部Webサーバで提供されるWebページ等)を組み立て、レイアウトをカスタマイズすることにより、ユーザ個人に適したページに構成したりすることができます。また、ユーザ認証が必要な他のWebアプリケーションに対するシングルサインオン機能も有しているため、そのようなアプリケーションに対するポータル(入り口)としても利用できます。
サイバーメディアセンターでは今後、本システムを核としてWWWでの情報提供を行っていく予定です。例えば、全国共同利用ユーザに対する最新情報の提供、課金情報等の統計情報の提供や、学生に対する様々な通知等も、本システムから提供する予定です。
2.3 ディジタルコンテンツ
サービスの要望が高かった以下の学術情報データベースを提供します。
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ISI-Thomson Scientific
- Web of Science (Science Citation Index Expanded)
- JCR Web (Science Edition)
- CAS
- Elsevier Science (ScienceDirect)
- Complete Navigator
- INSPEC
- 日外アソシエーツ (NICHIGAI/WEB)
- MDL
これらのデータベースのうち、CrossFireおよびBOOKPLUS、MAGAZINEPLUSについては条件付で学外ユーザにも提供します。
2.4 利用者端末および情報コンセントシステム
学内の利用者端末(情報教育用端末、言語教育用端末、図書館マルチメディア端末)を計419台導入しました。これらの端末は、平成14年秋に竣工予定の豊中教育研究棟をはじめ、豊中教育実習棟、吹田教育実習棟、工学部総合研究棟(新棟)、附属図書館に設置され、学内の端末不足の問題の緩和を図ります。
また、情報教育用端末は現有のものと同じくOSとしてLinuxを採用していますが、新たに導入した端末はVMware for Linuxを搭載することにより、Windowsも利用できるようになっています。
情報コンセントシステムは、ユーザが保有するパソコン等を学内LANに接続して利用できるようにするシステムです。現在、附属図書館に同様のシステムが導入されていますが†、これを拡充する形で豊中教育研究棟と豊中教育実習棟に情報コンセントを設置します。
2.5 アカウント統合管理システム
これまで、サイバーメディアセンターでは、全国共同利用システム、情報教育用計算機システム、言語教育用計算機システム、図書館用マルチメディア端末等でそれぞれ別にアカウント管理を行っていたため、ユーザの利便性向上や事務効率の向上のためにアカウントの統合管理が望まれていました。今回の更新では、これらのアカウント管理作業を統合するアカウント統合管理システムを導入しました(図4)。
このシステム導入により、サイバーメディアセンターが提供する全学にわたるあらゆるサービス、システムが同一のユーザ名・パスワードで利用できるようになります。ユーザのパスワード変更はWebページを通じて行い、変更されたパスワードは各システムに配信されます。また、各システムの統計情報の収集や課金計算等の処理も行います。

図4:アカウント統合管理システム
3.おわりに
今回の更新に伴い、以下のサービスは終了します。
- 画像処理・編集システム
- BIOSISデータベースサービス
また、アカウント統合管理システムおよび個人化情報提供システムの導入に伴い、パスワードの変更方法が変わります。大規模計算機システムのインターネットサービスにおける電子メール送受信の方法も、セキュリティ対策のためAPOPやPOP before SMTP、SMTP-AUTHなどを採用するため、それによりメールソフトの設定変更が必要になる場合があります。その他、システム更新についての詳細は、今後サイバーメディアセンター大規模計算機システム速報やホームページ等で随時お知らせしていく予定です。
今回のシステム更新は、アプリケーションサーバシステムとともに、新たにアカウントの統合管理や個人化情報提供サービスの実現や、研究活動に有用なディジタルコンテンツの提供など、新たなサービスにチャレンジしています。今後、これらのシステムが有効に利用され、学内外の教育研究活動が効果的に推進されることを願っています。