巻 頭 言

ITの大学病院を目指して


大阪大学サイバーメディアセンター
副センター長  下條 真司

 サイバーメディアセンターも設立から早いもので、2年が経とうとしている。ITの世界はドッグイヤーといわれるが、そのITサービスを一手に引き受けると宣言したサイバーメディアセンターもまさに生き馬の目を抜くがごとく、急速な変化を遂げている。
 e-Japan戦略をはじめとして、ITがわが国の競争力強化に重要であるという認識が急速に広まり、政府のITに対する投資も急増している。ナショナルバックボーンとしてのSINETをさらにグレードアップしたスーパーSINETの利用開始、全大学におけるセキュリティガイドラインの制定、電子図書館の整備、新しいキャンパス超高速ネットワークの整備、グリッドによる実験の開始等々、枚挙に遑がない。これらは、どれをとってもすべてサイバーメディアセンターの業務にかかわってくる。つまり、大学におけるITに関するあらゆるサービスの企画・立案・実行・運用まで面倒をみようという気概の下に出来上がったセンターが、そのねらい通りに機能している証とも言えるだろう。これらの予算執行のほとんどが本センターのためのものではなく大阪大学内外のサービス向上のためのものであり、センターの教官や職員は大阪大学全体のために寸暇を惜しんで、よりよいITサービスの向上・提供に努めている。
 このような状況が、サイバーメディアセンターにとって大きな変革の種をもたらしてくれていることもまた事実である。最近、サイバーメディアセンターと蛋白質研究所、情報科学研究科などが共同で提案していたITプログラム「スーパーコンピュータネットワークの構築」が5年間の研究プログラムとして文部科学省に認められた。これは、バイオ技術とITをグリッドと呼ばれる新しいコンピュータアーキテクチャ上に融合させ、計算機上(in silico)での創薬基盤を作ろうという試みである。この中でサイバーメディアセンターはバイオグリッドセンターとして、ITのみならず、学際的交流の中心としてさまざまな研究者にいわば研究サービスとも呼べるものを提供することをねらっている。
 大学病院では、医者、インターン、技師、看護師などさまざまな職種の人々が、最先端の医療技術を患者に届けるべく組織的に動いている。これが研究と社会貢献が密接に結びついた21世紀のひとつのビジョンを示していると思う。われわれはITの大学病院として、最先端のITをさまざまな学問分野の人々が利用できるよう研究サービスの整備・充実に努めたいと思っている。そのためには、人々の意識改革や組織の変革が必要である。独立行政法人化を目の前にして、われわれはさまざまな変革の先頭を走ることが重要であると思う昨今である。